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機能外科・てんかん外科について

パーキンソン病やジストニア、振戦などの機能的神経疾患に対し外科治療等を行い症状の改善・治療を専門的に行っております。
機能外科・てんかん外科の分野では、最新の学術に基ずき専門医として患者様のサポートを行います。

  • カテゴリー :機能外科・てんかん外科
  • 病名 :てんかん、パーキンソン病など
  • 平均入院期間 :症状により変動します。
  • 主な初期症状 :各種ページにて解説しています。
  • 最終更新 :2022年4月01日
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焦点性てんかんについて

焦点性てんかんの概要

●てんかんとは、脳の慢性的な電気的活動の異常によって、けいれんを主に、様々な症状を引き起こす病気(疾患)です。
●大きく分けると①焦点性てんかん、と②全般てんかん、に分けられます。す
●焦点性てんかんとは、脳の一部の領域に、電気的異常活動の源(みなもと)があり、これを焦点と呼び、ここからてんかん発作が始まる病気の事です。

焦点性てんかんについて
焦点性てんかん

焦点性てんかんの症状は何ですか?

●焦点の場所によって、様々な発作を引き起こします。
●手足の運動をつかさどる領域が焦点であると、手足が急に突っ張ってけいれんするような運動発作を起こしたり、言葉をつかさどる領域では、言葉が出なくなったりします。
●側頭葉てんかん(側頭葉てんかんの章を参照)では、側頭葉が焦点であり、口をもごもごさせたり、手足を無目的にごそごそさせたり、その場の状況にそぐわない行動をします。
●意識がくもってぼっとしてしまう場合(意識減損)、意識は保たれているのに手足がひきつるような場合と両方があります。
●発作はいずれも一時的で、せいぜい5分以内で消失します。
●5分以上続くような場合は、けいれん重積状態と呼ばれ、救急での処置が必要です。

焦点性てんかんの症状 焦点性てんかんの症状
焦点性てんかんの診断方法

焦点性てんかんの診断は?

●一回だけの発作は、脳卒中、外傷、強い心因性ストレスがかかった場合やなどに起きる発作(誘発発作)と区別が難しいため、原則二回以上の発作がある場合に診断されます。
●病院では、脳波検査、頭部MRI、グルコースPET(positron emission tomography)などが外来で行われます。
●脳波検査は脳の電気的活動を調べますが、頭部にノリで電極を装着して、1時間~二時間ほど記録します。
●一回の脳波検査で、正確に「てんかん」と診断される確率は3割程度です。
●頭部MRIでは脳の構造的異常を調べる事ができます。
●焦点性てんかんを起こしやすい異常として、海馬硬化症、脳腫瘍、皮質形成異常、脳血管奇形(脳動静脈奇形:AVM、海綿状血管腫)、脳出血痕、脳外傷痕などが挙げられます。
●焦点を明らかにする目的で、入院して、ビデオを撮りながら一日中脳波検査を行い、発作のある時の脳波変化を調べる検査(長時間脳波ビデオモニタリング)を行うことがあります。

焦点性てんかんの診断方法 焦点性てんかんの診断方法

焦点性てんかんの治療は?

焦点性てんかんの治療は?

●どのてんかんでも、初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
●幾つかのタイプの抗てんかん薬がありますが、単剤から開始して、発作が抑制できない場合は増量、更に異なるタイプの抗てんかん薬を使っていきます。
●抗てんかん薬の副作用も様々ですが、共通してみられるのは、眠気、めまい、皮膚の発疹などの症状です。
●1~2種類の抗てんかん薬を組み合わせた治療にて、6割程度のてんかん患者で良好な発作コントロールが得られます。
●抗てんかん薬で良好なコントロールが得られない場合、薬剤抵抗性てんかんと呼ばれ、てんかん外科治療を検討します。
●他の治療としてケトン食療法というものがあり、これは糖質を大幅にカットした食事療法です。

焦点性てんかんの診断方法

焦点性てんかんに対する外科治療とは?

焦点性てんかんに対する外科治療とは?

●適切な抗てんかん薬を二種類以上、二年以上使って、良好な発作コントロールが得られない場合、薬剤抵抗性てんかん、と呼び、てんかん外科治療を考慮します。
●近年では、明らかに手術で改善が期待できる場合は、抗てんかん薬治療で二年間を待たずに、手術を行うケースも増えています。
●焦点性てんかんに対する外科治療では、てんかん焦点を手術にて取り除きます。
●手術を成功させるためには、焦点を正確に同定する(焦点診断)が必要です。

焦点性てんかんの診断方法

焦点性てんかんに対する外科治療①-頭蓋内電極留置術

焦点性てんかんに対する外科治療①-頭蓋内電極留置術

●焦点診断の為に、頭蓋内電極を留置する手術を先行して行う事があります。
●頭蓋内電極留置には、硬膜下電極というシート状の電極を脳表に敷く方法(硬膜下電極留置法)と、定位的に細い針状の電極を脳内に複数刺入する方法(定位的頭蓋内脳波記録法:stereotactic electroencephalography; SEEG)があります。
●どちらも全身麻酔の手術が必要で、術後一週間程度脳波ビデオモニタリングを行います。
●焦点が同定され、切除しても脳機能が維持できる、と考えられた場合に、焦点切除術が計画されます。

頭蓋内電極留置術 頭蓋内電極留置術

焦点性てんかんに対する外科治療②-焦点切除術

焦点性てんかんに対する外科治療②-焦点切除術

●てんかん焦点が定まり、また同部を切除しても現状の脳機能がおおよそ維持できる場合に、焦点切除術が行われます。
●手術は全身麻酔にて、顕微鏡下にナビゲーション、術中脳波、機能温存の為の術中モニタリングなどを併用しながら、正確に予定した領域(てんかん原性領域といいます)を切除します。
●言語機能をつかさどる領域(例えば左前頭葉の下前頭回、左側頭葉の上側頭回後方)にてんかん焦点が近い場合には、手術中に一度麻酔を覚まして、覚醒した状態で、会話してもらいながら摘出する、覚醒下手術を行う事があります。

焦点性てんかんに対する外科治療②-焦点切除術

術後のてんかん抑制効果について

術後のてんかん抑制効果について。

●報告により違いがありますが、発作が消失、もしくはまれに出現する状態になる確率については、一般に次のように言われています。
●側頭葉てんかん:70-80%
●器質病変(脳腫瘍、皮質形成異常、血管腫など)を認める焦点性てんかん:70%
●器質病変を認めない焦点性てんかん:50%

合併症について

合併症について

●一般に合併症の発生率は小さなものも含めて5%未満です。
●脳出血、脳梗塞、感染、髄液漏、てんかん、などが開頭術に伴い合併する可能性があります。
●焦点の部位によって、運動麻痺、失語症、視野障害などの神経症状が合併する可能性があります。

名古屋大学医学部附属病院での特徴

名古屋大学医学部附属病院での特徴

●当院は愛知県てんかん診療拠点施設に認定されており、小児科、神経内科、精神科等と連携して名大てんかんセンターを設立し、各科のてんかん専門医を中心として、第三次てんかん診療(外科手術を含むてんかんの総合的治療)を実施しております。
●当院でのてんかん外科手術では、定位的頭蓋内電極留置術(stereotactic electroencephalography; SEEG)を、定位手術ロボットアームを使って実施しています。
●このSEEGは患者さんの負担を少なくし、合併症も少なく、正確かつ安全に頭蓋内電極留置できて、3次元的に診断できるという利点があり、全国で注目されています。
●てんかん焦点が言語野など脳の重要な機能を有する部位に近い場合、覚醒下手術を実施しており、麻酔スタッフ、言語療法士スタッフを含むチームが充実していて、経験が豊富です。
●2016年から2021年10月まで当院において52例の焦点切除術、32例の頭蓋内電極留置(SEEG・硬膜下電極)術が施行されています。

名古屋大学医学部附属病院での特徴

当院のてんかん外科に関する臨床研究について

当院のてんかん外科に関する臨床研究について

●名古屋大学 機能的脳神経外科グループでは、生命倫理委員会で承認された以下の研究を、脳とこころの研究センターと連携して行っています。(https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/)
●「脳外科手術における術前評価としての、機能的MRIおよびMEGによる新しい高次脳機能局在同定法の確立」(2013-0081)
研究専用のMRI/MEGを使用して、ネットワーク解析を駆使して、新しい焦点診断、および高次脳機能の評価法を開発します。
●「脳波-機能的MRI同時記録によるてんかん焦点及び伝播経路診断システムの開発」(2014-0122)
脳波とMRIを同時に記録して、てんかん焦点の新規診断法を開発し、脳内ネットワーク変化を評価します。

●「脳内電極脳波を用いたヒトの高次脳機能に関する研究」(2019-0013)
SEEGで脳内に留置した電極より脳波活動を抽出し、様々な解析を加えることで高次脳機能と関連した活動を調べます。

●「言語野近傍の焦点性てんかんに対する覚醒下手術の有用性の検証」(2020-0083)
てんかん外科においての覚醒下手術が、高次脳機能温存と発作抑制にどの様に有用であるが調査します。

●「心電図解析を用いたてんかん発作の検知・予知・鑑別診断プログラムの開発のための研究」(2021-0038)
名古屋大学工学部、東京医科歯科大学などと連携して、心電図を使った発作予知システムの開発を目指します。

当院のてんかん外科に関する臨床研究について 当院のてんかん外科に関する臨床研究について 当院のてんかん外科に関する臨床研究について

正式名称

焦点性てんかん

初期症状

手足の運動をつかさどる領域が焦点であると、手足が急に突っ張ってけいれんするような運動発作を起こしたり、言葉をつかさどる領域では、言葉が出なくなったりします。

手術内容

初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
外科治療では、てんかん焦点を手術にて取り除きます。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

側頭葉てんかんについて

側頭葉てんかんの概要

●側頭葉てんかんは、焦点性てんかんの最も代表的なタイプです。
●脳内の側頭葉にてんかん焦点があり、焦点の位置で内側型、外側型に分類されます。
●内側側頭葉てんかんは意識減損や自動症を伴う特徴的な焦点性発作を示します。
●5~10歳頃に初発し、思春期にいったん収まりますが再発して難治となることがしばしばあります。
●内側側頭葉てんかんは、海馬を含む側頭葉の内側構造が焦点であり、外科治療で良い発作抑制を得られることが知られています。

側頭葉てんかんについて
内側側頭葉てんかんの症状は何ですか?

内側側頭葉てんかんの症状は何ですか?

●発作は非常に特徴的です。
●前兆として、おなかや胸が気持ち悪くなる(上腹部不快感)、以前みた事がある感じがする(既視感)、変なにおいを感じる(幻臭)などがあります。
●前兆の後、意識がだんだん曇ってきて、おぼえがなくなります(意識減損)。
●無意識に、口をペチャペチャさせる(口部自動症)、手足をごそごそさせる(上肢自動症)を呈する事があります。
●発作焦点と反対側の上肢に変な恰好でこわばる、姿勢異常(ジストニア肢位)を呈する事があります。
●発作は通常1-2分で治まりますが、その後、もうろうとして意識が回復しない状態(発作後もうろう状態)が20分程度続く事があります。
●大きな発作に移行すると、全身が強直し、がくがくする(強直間代発作)に移行する事があります。
●発作が言語優位側(右利きの方では95%が左側の脳)から起きている場合、記憶障害を呈する事があります。

内側側頭葉てんかんの症状
内側側頭葉てんかんの診断方法

内側側頭葉てんかんの診断は?

●病院では、脳波検査、頭部MRI、グルコースPET(positron emission tomography)などが外来で行われます。
●脳波では、側頭葉前方から前頭葉後方領域に、尖った波のあとに大きな遅い波が続く棘徐波(スパイク アンド ウエーブ)がしばしば見られます。
●頭部MRIでは、側頭葉内側にある海馬が固く変性する海馬硬化症を認める事が多いです。
●焦点を明らかにする目的で、入院して、ビデオを撮りながら一日中脳波検査を行い、発作のある時の脳波変化を調べる検査(長時間脳波ビデオモニタリング)を行う場合があります。

内側側頭葉てんかんの治療は?

内側側頭葉てんかんの治療は?

●内側側頭葉てんかんにおいても、初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
●5~10歳ころに発症後、内服治療にていったん落ち着く事が多いのですが、思春期以降に再発し、薬剤抵抗性になることも多いです。
●抗てんかん薬で良好なコントロールが得られない場合、薬剤抵抗性てんかんと呼ばれ、てんかん外科治療を検討します。

内側側頭葉てんかんに対する外科治療

内側側頭葉てんかんに対する外科治療とは?

●一般に適切な抗てんかん薬を二種類以上、二年以上使って、良好な発作コントロールが得られない場合、薬剤抵抗性として、てんかん外科治療を考慮します。
●内側側頭葉てんかんでは、手術で改善が期待できるため、抗てんかん薬治療で二年間を待たずに、手術を行うケースも増えています。
●内側側頭葉てんかんに対する外科治療では、てんかん焦点である海馬、および扁桃体を選択的に切除する選択的海馬扁桃体切除術、と側頭葉前方を一塊として切除する側頭葉前方切除術があります。

内側側頭葉てんかんに対する外科治療 内側側頭葉てんかんに対する外科治療 内側側頭葉てんかんに対する外科治療
術後のてんかん抑制効果について

術後のてんかん抑制効果について

●報告により違いがありますが、発作が消失、もしくはまれに出現する状態になる確率については、一般に70-80%と言われています。
●最近では、側頭葉前方切除術の方が、選択的海馬扁桃体切除術に比べて、発作抑制率がやや高い、と報告されています。

合併症について

合併症について

●一般に合併症の発生率は小さなものも含めて5%未満です。
●上1/4の視野が欠けることがあります(この症状は日常生活ではあまり気づきません)。
●言語優位側(通常は左側)では、言語性記憶が低下する事があります。
●この記憶障害は、右側手術ではあまり目立ちません。
●海馬硬化が十分進んだ状態では、術後の記憶障害は目立ちません。
●脳出血、脳梗塞、感染、髄液漏、てんかん、などが開頭術に伴い合併する可能性があります。
●術後の梗塞や出血がおきると、運動麻痺、失語症、視野障害などの神経症状が合併する可能性があります。

名古屋大学医学部附属病院での特徴

名古屋大学医学部附属病院での特徴

●当院は愛知県てんかん診療拠点施設に認定されており、小児科、神経内科、精神科等と連携して名大てんかんセンターを設立し、各科のてんかん専門医を中心として、第三次てんかん診療(外科手術を含むてんかんの総合的治療)を実施しております。
●2016年~2021年10月現在、当院脳神経外科で諸検査を行い、典型的な内側側頭葉てんかんと診断され、手術を実施した症例は合計21例でしたが、全例で発作は消失し、永続する合併症はありません。

正式名称

側頭葉てんかん

初期症状

前兆として、おなかや胸が気持ち悪くなる(上腹部不快感)、以前みた事がある感じがする(既視感)、変なにおいを感じる(幻臭)などがあります。
無意識に、口をペチャペチャさせる(口部自動症)、手足をごそごそさせる(上肢自動症)を呈する事があります。

手術内容

初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
馬、および扁桃体を選択的に切除する選択的海馬扁桃体切除術、と側頭葉前方を一塊として切除する側頭葉前方切除術があります。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

全般てんかん

全般てんかんの概要

●てんかんとは、脳の慢性的な電気的活動の異常によって、けいれんを主に、様々な症状を引き起こす病気(疾患)です。
●大きく分けると①焦点性てんかん、と②全般てんかん、に分けられます。
●全般てんかんとは、脳内の明らかな焦点を持たず、脳の皮質及び皮質下をふくむ広いネットワークが急速に巻き込まれる発作の事です。

全般てんかんについて
焦点性てんかん

全般てんかんの症状は何ですか?

●全般てんかんにもいくつかのタイプがあり、代表的なものとして、欠神発作、ミオクローヌス発作、強直間代発作、脱力(失立)発作があります。

欠神発作とは?

欠神発作とは?

●欠神発作とは、数ー数十秒の前触れもなく始まる意識減損発作の事です。
●“子供が時々ぼっととして止まっているのです”、という訴えで、お母さまが病院に連れてくることが多いです。
●昔は小発作(プチ・マル petit mal)と呼ばれていました。
●3〜12歳(6〜7歳がピーク)が好発年齢で、女の子に多い特徴があります。
●欠神発作は、思春期までに3割消失、30歳時までに7〜8割消失すると言われます。
●欠神発作の脳波は3ヘルツの棘徐波複合が有名です。

欠神発作とは?
ミオクロニー発作とは?

ミオクロニー発作とは?

●オクロニー発作とは、若い男性に多く、突然に体の一部がびくっと痙攣して、箸や鉛筆を落とす発作が主体です。
●ミオクロニー発作では、時に(年に数回程度)、全身性の強直間代発作になることがあります。
●この症候群を若年性ミオクロニーてんかん(JME)と呼びます。

ミオクロニー発作
強直間代発作とは?

強直間代発作とは?

●強直間代発作とは、意識を消失して、全身の筋肉が固く収縮する(強直相)と、弛緩する(間代相)を数秒単位で繰り返す発作です ●昔は大発作(グラン・マル grand mal)と呼ばれていました。
●通常、一分程度で終了します。
●この発作のみを示す症候群もありますが、若年性ミオクロニーてんかんに合併する事が良く知られています。
●また、焦点性てんかんにおいて、脳全体が巻き込まれることで、引き続いて生じることがあります。

強直間代発作
脱力(失立)発作とは?

脱力(失立)発作とは?

●筋肉の緊張が突然低下、もしくは消失する発作です。
●頭をガクッと大きく下げる様な発作や、人形が倒れる様にばたっと倒れたりします。
●支持ができないため、顔面などに大きなケガをすることがあります。
●単独の症候群としてはあまり存在せず、レノックス・ガスト―症候群や、ドーズ症候群、その他に全般てんかんなどの発作の一つとして見られます。

脱力(失立)発作とは?
全般てんかんの診断は?

全般てんかんの診断は?

●当院では、脳波検査、頭部MRIなどが外来で行われます。
●脳波検査では、全般性棘徐波、多棘徐波、3ヘルツ棘徐波複合(欠神発作)などが認められます。
●頭部MRIでは脳の構造的異常を調べる事ができますが、明らかな異常を認めない場合も多いです。

全般てんかんの診断
全般てんかんの治療は?

全般てんかんの治療は?

●どのてんかんでも、初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
●幾つかのタイプの抗てんかん薬がありますが、単剤から開始して、発作が抑制できない場合は増量、更に異なるタイプの抗てんかん薬を使っていきます。
●抗てんかん薬の副作用も様々ですが、共通してみられるのは、眠気、めまい、皮膚の発疹などです。
●もとの症候群がなにかに依存しますが、欠神発作、若年性ミオクロニーてんかんでは、抗てんかん薬にて、比較的良好なコントロールが得られます。
●脱力(失立)発作や強直間代発作では、抗てんかん薬でコントロールが不良の場合、脳梁離断術や迷走神経刺激術を行う事があります。

脳梁離断術とは?

脳梁離断術とは?

●薬剤抵抗性の難治なてんかんで、更に焦点切除術もできないような場合、発作の減少を目的として施行します。
●発作数が減少し、症状が軽くなりますが、発作の焦点を取り除くのではないため、発作消失はまれとなります(緩和手術といいます)。
●左右の大脳半球を連絡する脳梁と呼ばれる交連線維を切除します。
●10歳以下の小児では一期的に全脳梁を離断しますが、それ以上の患者さんでは、合併症の出現を予防するため、前2/3の脳梁の離断にとどめ、後日後ろ1/3の離断を追加する事があります。

脳梁離断術とは? 脳梁離断術とは?
脳梁離断術後のてんかん抑制効果について

脳梁離断術後のてんかん抑制効果について

●報告により違いがありますが、完全に発作が消失する事は少なく、数%程度です。
●脱力(失立)発作に関しては、9割近くの症例で消失します(全脳梁離断後)。
●強直間代発作に関しては、5割程度で消失、5割程度の患者で著明減少(9割減少)します。

脳梁離断後の合併症について

脳梁離断後の合併症について

●一般に合併症の発生率は小さなものも含めて5%未満です。
●脳出血、脳梗塞、感染、髄液漏、てんかん、などが開頭術に伴い合併する可能性があります。
●全脳梁離断後は、離断症候群と呼ばれる症状が出現する事が多いです。
●離断症候群には、自発言語の減少、無動、失禁、左下肢麻痺らが挙げられます。
●前2/3の離断では数日間で改善しますが、一期的全脳梁離断では長いと数か月無言状態となることもあります。
●離断症候群は通常、10歳以下では生じにくい、とされています。

迷走神経刺激術とは

迷走神経刺激術とは

●薬剤抵抗性の難治なてんかんで、更に焦点切除術もできないような場合、発作の減少を目的として施行します。
●発作数が減少し、症状が軽くなりますが、発作の焦点を取り除くのではないため、発作消失はまれとなります(緩和手術といいます)。
●左頸部にある迷走神経に刺激電極を巻き付け、前胸部にバッテリーを留置する手術です。
●刺激装置より、迷走神経に持続的に電気刺激することでてんかん発作を軽減します。
●発作の前兆を感じた時、マグネットで体外的に操作することで、強い電気刺激を一時的に与えて、発作を予防することもできます。

迷走神経刺激術とは
迷走神経刺激術のてんかんの抑制効果について

迷走神経刺激術のてんかんの抑制効果について

●報告により差異はありますが、一般に二年間刺激治療を続けると発作の頻度が50%以下に減少し、発作の程度も軽くなります。
●覚醒度がよくなる、記憶の改善、情動面の改善など、様々な形のADLの改善が報告されています。

迷走神経刺激術のてんかんの抑制効果について
迷走神経刺激術の合併症について

迷走神経刺激術の合併症について

●一般に合併症の発生率は小さなものも含めて5%未満です。
●手術に関連して、創部感染、一過性声帯麻痺があり得ます。
●非常にまれな例ですが、植え込み中のテスト刺激による心停止が報告されております。
●刺激治療の副作用として、咳、嗄声、咽頭部不快感がありますが治療継続につれて消失します。

迷走神経刺激術後のMRI撮影について

迷走神経刺激術後のMRI撮影について

●刺激装置はMRI対応の金属で製造されていますが、撮影する場合には、制限があります。
●MRIを撮影できる施設は、施設基準を満たす必要があり、限られています。
●撮影時には、医師立ち合いのもと、刺激装置をオフにする必要があります。
●頭部MRI、腰部MRIは限定された撮像法で撮影します。
●頸部、胸部のMRIは撮影できません。
●撮影後、医師立ち合いのもと、オンにします。

名古屋大学医学部附属病院での特徴

名古屋大学医学部附属病院での特徴

●当院は愛知県てんかん診療拠点施設に認定されており、小児科、神経内科、精神科等と連携して名大てんかんセンターを設立し、各科のてんかん専門医を中心として、第三次てんかん診療(外科手術を含むてんかんの総合的治療)を実施しております。
●当院では迷走神経刺激術の技術認定医がおり、手術、及び術後の刺激調整が可能です。
●当院での緩和手術(脳梁離断および迷走神経刺激術)は、2016年から2021年10月までに18例施行しておりますが、大きな合併症はなく、治療効果は海外報告と同様です。
●全般性てんかんでは薬物療法をメインに、緩和手術など包括的な治療戦略が必要ですが、当院はてんかんセンターであり、多くの診療科の連携により可能となっています。

名古屋大学医学部附属病院での特徴

正式名称

全般てんかん

初期症状

いくつかの発作の種類により症状が異なります。詳しくは上記をご覧下さい。

手術内容

どのてんかんでも、初期治療は抗てんかん薬による内服治療です。
発作の種類により外科手術の内容も異なります。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

パーキンソン病の概要

パーキンソン病の概要

●パーキンソン病は、脳の黒質にあるドパミン神経細胞が障害され、運動障害をはじめとする様々な症状を引き起こします。
●有病率は1000人あたり1-2人程度と言われています。 加齢により発症率は高くなっていきます。
●5-10%は家族にパーキンソン病発症者が存在する遺伝性パーキンソン病といわれますが、そのほかの多くの患者さまは遺伝と関係なく発症する(孤発型)とされます。

パーキンソン病の運動症状

パーキンソン病の運動症状

●パーキンソン病の症状としては、からだの動きが遅くなり運動が少なくなる(無動)、筋肉が固くなる(固縮)、手足のふるえ(振戦)、安定した姿勢を保つことができない(姿勢保持障害)などの運動症状が出現してきます。
●歩行の開始時や途中で停止してしまう(すくみ足)、歩行中に意図せず歩行が加速してしまう(加速歩行)などがみられることもあります。
●ふるえ(振戦)の多くは、じっとしているときに出現(静止時振戦)し、からだを動かすときにはふるえが軽くなります。
●自分の意思とは関係なく手足が勝手に動くジスキネジアという症状も、パーキンソン病の薬を飲んでいる方にみられることがあります。

パーキンソン病の運動症状
パーキンソン病の非運動症状

パーキンソン病の非運動症状

運動症状以外にも、嗅覚障害、からだの痛み、自律神経症状、精神症状、睡眠障害、認知機能障害なども高頻度に合併してきます。
●睡眠障害としては、日中の過眠や、夜間の不眠、レム睡眠行動障害(夢の内容に一致した異常行動)などが挙げられます。
●精神症状としては、うつ、不安感、幻覚、衝動・欲求を抑えることができない運動制御障害などがあります。
●自律神経症状には、立ちくらみ、頻尿、便秘、発汗障害、性機能障害などがあります。

パーキンソン病の診断

パーキンソン病の診断

●パーキンソン病を100%の確率で診断できる検査はありません。
●診断においては、まずは患者さまの症状と病歴が重要となります。
●さらに、パーキンソン病の診断のサポートとなる精密検査を行います。
●具体的には、MIBG心筋シンチグラフィーによる心筋交感神経系の評価や、ドパミントランスポーターシンチグラフィーによるドパミン神経の変性・脱落所見の評価などを行います。
●パーキンソン病にみられる運動症状は、その他の神経疾患でもみられる場合があり、これらを除外診断する必要があります。
●名古屋大学脳神経外科では、当院の脳神経内科と連携をして、正確な診断に努めています。

パーキンソン病の治療方法

パーキンソン病の治療方法

① 薬剤治療
●治療の主体はレボドパの内服です。この薬剤は、脳内でドパミンに変わります。 脳で不足したドパミンを補うことで、パーキンソン病症状を改善させます。
●ドパミンアゴニストというドパミンに似た作用を持つ薬や、レボドパやドパミンの分解を抑える薬などもあります。その他にも、色々な作用の薬が存在します。
●発症初期には薬が良く効くことが多いですが、病気が進行すると薬の効果が得られにくくなります。 通常は、病気の進行に伴い徐々に内服していただく種類・量が多くなります。

② 手術治療
●手術の目的は、調子が悪い時(オフの時)の底上げです。
●病状が進行したパーキンソン病患者さまが対象となりますが、内服薬にまだ反応が残っていて、 内服しない時と、したときの差が大きい方が手術の適応となります。

パーキンソン病の治療方法

●脳神経外科で行われる手術には、脳深部の刺激療法と、破壊術があります。
●治療ターゲットは、主に脳内の視床下核もしくは淡蒼球内節です。 症状のなかで振戦がとても目立つ患者さまには、視床腹中間核がターゲットになることもあります。
●破壊術は、電極を刺入して電気を流し、生じる熱によってターゲットを破壊することでパーキンソン病の症状を改善させます。 人工物を体内に植え込む必要はありませんが、基本的に両側の凝固術はできません。
●身体の両側に症状のあるパーキンソン病の患者さまには、刺激療法をおすすめすることが多いです。
●脳深部刺激療法(DBS)は、刺激用電極をターゲットに留置し、胸部の皮下に刺激装置を植え込みます。 電極と刺激装置をつなぐリードも皮下に通します。 持続的刺激することにより、パーキンソン病の症状を改善させます。 破壊術とは異なり、両側の手術が可能です。
●名古屋大学では、定位手術用ロボットであるニューロメイトを活用して手術を実施しています。

【パーキンソン病に対する手術件数】
(2018/1から2021/8まで)
脳深部刺激療法 21
高周波凝固術 1

パーキンソン病の手術 パーキンソン病の手術


③ 集束超音波療法
●名古屋大学の関連病院である名古屋共立病院に、MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)が中部地区で初導入されました(2017年7月)。 頭部に超音波発生装置を装着し、超音波の位相と振幅を制御しながら、脳内の標的部位に超音波を集束させます。 集束した超音波から生まれる熱エネルギーにより、標的部位に熱凝固巣を作成します。 皮膚切開や、頭蓋骨にドリルで穴を開ける必要がない、低侵襲な治療方法です。 2020年9月より、薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の振戦や、ジスキネジア等の運動症状が保険適用となりました。

【パーキンソン病に対する集束超音波療法の件数】 2
(2020/9から2020/12まで)
保険適応となり、2021年からは、更に治療件数が増えています。

パーキンソン病 集束超音波療法 パーキンソン病 集束超音波療法
パーキンソン病手術に対する当院での研究

パーキンソン病手術に対する当院での研究

●名古屋大学脳神経外科機能外科グループでは、神経内科や脳とこころの研究センターと連携して、下記の臨床研究を実施しております。
患者様からのご参加を募っております。
興味があるかたは、主治医にご質問ください。

➢脳外科手術における術前評価としての、機能的MRIおよびMEGによる新しい高次脳機能局在同定法の確立(2013-0081)
➢脳深部刺激術後のパーキンソン病患者における言語障害の病態解析(2016-0158)
➢運動異常症に対する定位脳手術の臨床的効果と病態ネットワーク解(2020-0640)

正式名称

パーキンソン病

初期症状

からだの動きが遅くなり運動が少なくなる(無動)、筋肉が固くなる(固縮)、手足のふるえ(振戦)、安定した姿勢を保つことができない(姿勢保持障害)など

手術内容

脳深部の刺激療法と、破壊術があります。詳しくは上記、パーキンソン病の治療方法をご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

振戦の概要

振戦の概要

●振戦とは、身体の一部に不随意に生じる、リズミカルで振動性の運動です。
●振戦を起こす原因には様々なものがあります。 患者さまの病歴(発症年齢、家族歴、経時的な変化、薬物や毒素への暴露)、からだの分布、出現する状態・タイミング、周波数などが、診断の手がかりとなります。
●振戦の治療は原因疾患により異なるため、まずは正確な診断を得ることが重要です。
●振戦の原因として代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

① 生理的振戦
生理的な状態でみられる、わずかなふるえのことです。精神的緊張、疲労、運動、寒さなどにより増強されます。

② 本態性振戦
まだ発症の原因がよくわかっていません。通常は動作時のふるえが目立ちます。

③ パーキンソン病
静止時(じっとしている時)にふるえが出現し、動作時には軽減することが多いです。 固縮、無動などのふるえ以外の症状も出現してきます。

④ ニューロパチーに伴う振戦
糖尿病性、尿毒症性、遺伝性などがあります。

⑤ 薬剤性振戦
これまでに薬剤が原因のふるえも報告されています。 具体的には、交感神経刺激薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不整脈薬などがあります。

⑥ 甲状腺機能亢進症による振戦
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、姿勢時の振戦が見られます。

⑦ 慢性アルコール中毒に伴う振戦
お酒の飲みすぎにより、ふるえが起きることがあります。

本態性振戦の概要

本態性振戦の概要

●原因不明(本態性)で、ふるえ(振戦)が起こる疾患です。
●基本的にふるえ以外の症状はありません。
●本態性振戦の患者さまは、人口の1-3%程度存在します。 原因遺伝子の報告もあり、血縁者にも振戦がみられることも珍しくありません。
●主に手や前腕にふるえが出現します。 頭部、声、足などのふるえを伴うこともあります。
●ふるえは静止時には目立たず、動作時(字を書くとき、食事をするときなど)に悪化する特徴があり、日常生活に支障をきたします。

本態性振戦
本態性振戦の診断

本態性振戦の診断

●患者さまの病歴や症状をもとに、本態性振戦の診断を行います。
●本態性振戦以外の病気でも、ふるえを伴う可能性があります。 パーキンソン症候群、ジストニア、運動失調、甲状腺機能亢進症などのふるえを伴う疾患を除外する必要があります。
●必要に応じて血液検査、MRI、SPECT(スペクト)などの精密検査を行い、正確な診断をもとに適切な治療を行います。

本態性振戦の治療方法

本態性振戦の治療方法

① 薬剤治療
●本態性振戦には、β遮断薬が処方されます。 β遮断薬は高血圧や狭心症によく使用される薬で、交感神経の刺激を抑えることで、ふるえを改善させる効果が期待できます。
●β遮断薬は喘息のある方には、発作を誘発する恐れがあるため使用できません。 β遮断薬が使用できなかったり、β遮断薬でふるえが抑えられない場合は、抗不安薬や抗てんかん薬などが用いられます。

② 手術治療
●薬物治療の効果が乏しく、ふるえ症状が強い場合は手術を考慮します。
●手術には、高周波凝固術(Radiofrequency Thermocoagulation: RF)と脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)があります。
いずれも頭蓋骨に小さな穴を開けて、脳の視床Vim核に向けて電極を刺入します。 ●脳深部刺激療法(DBS)は、刺激用電極を視床Vim核に留置し、胸部の皮下に刺激装置を植え込みます。 電極と刺激装置をつなぐリードも皮下に通します。 持続的に視床Vim核を刺激することにより、振戦を改善させます。
●高周波凝固術(RF)は、電極を刺入して電気を流し、生じる熱によって視床Vim核を破壊することで振戦を改善させます。 人工物を体内に植え込む必要はありませんが、基本的に両側の凝固術はできないので、治療したい側(右手か左手かなど)を選択する必要があります。
【本態性振戦に対する手術件数】
高周波凝固術 16
脳深部刺激療法 6
(2018/1から2021/8まで)

③ 新たな治療選択肢
●本態性振戦に対する新たな治療として、MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)が2016年12月に薬事承認されました。 中部地区で唯一、名古屋大学の関連病院である名古屋共立病院に2017年7月に導入されました。 頭部に超音波発生装置を装着し、超音波の位相と振幅を制御しながら、脳内の標的部位に超音波を集束させます。 集束した超音波から生まれる熱エネルギーにより、標的部位に熱凝固巣を作成します。 皮膚切開や、頭蓋骨にドリルで穴を開ける必要がない、低侵襲な治療方法です。
【本態性振戦に対する集束超音波療法の件数】
76件
(2018/1から2020/12まで)

本態性振戦の治療方法 本態性振戦の治療方法 本態性振戦の治療方法

正式名称

本態性振戦

初期症状

原因不明(本態性)で、ふるえ(振戦)が起こる疾患です。
基本的にふるえ以外の症状はありません。

手術内容

詳しくは上記、本態性振戦の治療方法をご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。