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脊髄・脊椎疾患について

手足のしびれ感 手足のしびれ感は脊髄の病気や坐骨神経痛で発生します。
脊髄や末梢神経が傷ついておきる現象です。
肩こりや頚肩腕症候群、肘の腱鞘炎、下肢の筋肉痛などでも一時的にしびれ感を感じることがありますが、それらは様子を見てもよいでしょう。

  • カテゴリー :外科
  • 病名 :脊髄・脊椎疾患
  • 平均入院期間 :3週間程度
  • 主な初期症状 :手足のしびれや痛み、歩行障害など。
  • 最終更新 :2022年4月01日
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頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニア

1)頚椎の構造と疾患概念
頚椎は骨(7個)と椎間板(骨の間に存在するクッション)が交互に組み合わさった構造をしています。 脊髄神経はこの骨の真ん中の管腔構造の部分(脊柱管)を通って存在しています。 骨と骨の間の小さな穴(椎間孔)からはこの脊髄神経からわかれた神経根と呼ばれる細い神経が出てきます。 神経根は左右8対あり、それぞれ肩、腕、指などに到達し、支配している部分が異なります。
椎間板ヘルニアとはクッションである椎間板がいろいろな力がかかることで壊れてしまい、変形して神経を圧迫した状態です。 中心の脊髄神経を圧迫することもあれば細い神経根のみを圧迫することもあります。

頚椎椎間板ヘルニア

下に示すのは頚椎椎間板ヘルニアのMRIです。
椎間板ヘルニアが飛び出して、向かって右側の神経根を圧迫しています。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
脊髄神経を圧迫すると手の細かい作業がしにくくなったり、ふらつきやすくなったりします。 ひどい時は尿が出にくくなることもあります。 1本の神経根を圧迫すると首から肩甲骨の裏、腕、手指にかけて耐えがたい焼けるような痛みやしびれが生じます。 これは首を上にそらすと悪化します。 痛みやしびれの部分に一致して脱力が生じます。

3)診断
頚椎のMRIを撮影することで容易に診断できます。

4)治療
痛みが強い時には安静、鎮痛剤、シップ、頚椎カラー固定などでまず経過を見ます。 これらの治療で改善しない時には症状に応じて頚椎を引っ張る牽引療法を行います。 症状が長引く方や悪化する例、画像上神経への圧迫が強い例、重度の症状がある例は手術を考慮します。

5)手術治療
手術は手術用顕微鏡を用いて行います。 前頚部の皮膚のしわに沿って皮膚を3-4㎝ほど切開して行います。 しわに沿った傷で、表面はテープで留めて糸で縫わないのでほとんど目立たなくなります。 多くの病院では頚椎椎間板ヘルニアは大きく骨を削り(1.5-2㎝)、その削った後の空洞部分に金属を埋め込む手術を行っていますが、当院ではキーホールと呼ぶ小さな6mm程度の穴を骨にあけて、その穴から椎間板ヘルニアを摘出します。 穴が非常に小さいので金属を埋め込む必要がなく、体への侵襲も小さい安全な手術です。 小さな穴は1年ほどで自然に骨ができてきます。
これは、術後の頚椎のCTです。 このように小さな穴をあけるだけで手術は可能です。

頚椎椎間板ヘルニア

6)術後経過
手術の翌日には歩行でき、手術の1週間後にはテープをはがしてその翌日には退院できます。

変形性頚椎症

変形性頚椎症

1)疾患概念
頚椎の骨や椎間板が加齢に伴い負担がかかることにより変形してきます。 これにより、頚椎の骨に骨棘といわれる骨の一部がとげのように飛び出してきます。 これは膝や肩が加齢とともに変形してくるのと同じ現象です。 また、頚椎の上下の骨をつなぎ合わせているゴムバンドの役割をしている黄色靭帯が変性し、厚みを増してきます。 変形した椎間板や骨のとげ、肥厚した黄色靭帯により脊髄神経が通る脊柱管が狭窄し、脊髄神経、神経根が圧迫されてしまった状態がこの病気です。

頚椎椎間板ヘルニア

下に示すのは変形性頚椎症のMRIです。 本来、脊髄神経の周りには脳脊髄液という水が存在し、これがMRIでは白く写ります。 しかし、脊柱管が狭くなった部分ではこの白い水の部分がなくなってしまいます。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
脊髄神経が圧迫されると手の細かい作業がしにくい、歩くのがふらつく、手足の先のほうにしびれがあるという状態になります。 神経根の圧迫では首や肩から肩甲骨の裏、腕や手指にしびれ、痛みが走ります。

3)診断
頚椎のMRI、単純レントゲン検査を行います。

4)治療
安静、シップ、内服薬、頚椎カラーなどでしばらく様子を見ますが、脊髄神経を圧迫することによる症状はこれらの治療では改善する可能性は低く、手術治療を行う必要があります。

5)手術
脊椎の骨と骨の間の部分を椎間と言います。 脊髄が圧迫されている部分が1椎間もしくは2椎間であれば、あおむけに寝て頚椎の前方から手術を行います。 3椎間以上では腹這いに寝て頚椎の後方から手術を行います。
前方からの手術は前頚部の皮膚のしわに沿って3-4㎝の皮膚切開を置いて椎間板を摘出し、その上下の骨を少し削り、脊髄を圧迫している骨棘を取り除きます。 最後に椎間板を取り除いた空間にチタン製のケージと呼ばれる金属を置いて終了します。
後方からの手術は後頚部に6-8㎝の皮膚切開を置いて頚椎の後方に付着する筋肉を傷つけないように温存しながら骨を削り脊柱管を拡大します。 拡大する時にアパセラムという人工骨を置いて手術を終了します。
どちらの手術も安全性の高い確立された手術です。

6)術後経過
手術後1週間で抜糸し、翌日退院というのが標準的な経過です。

頚椎後縦靭帯骨化症

頚椎後縦靭帯骨化症

1)疾患概念
後縦靭帯とは脊椎の後ろ側を縦に走り、骨同士をつないでいるゴム状のバンドのような組織です。 これにより骨同士が外れないようになっています。 この靭帯が厚みを増して骨のように硬くなってしまう病気で、原因は不明で、厚生省の特定疾患にも認定されており、難病と考えられています。 骨化した後縦靭帯により、脊柱管が狭窄し、脊髄神経を圧迫して症状が出現します。 症状がなくても転倒などの外傷により、脊髄損傷をきたすことがあります。

頚椎椎間板ヘルニア

以下は左が後縦靭帯骨化症の頚椎CT、右の2つはMRIです。 病変が脊髄を圧迫しているのが分かります。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
脊髄神経を圧迫することによる症状と、神経根を圧迫することによる症状のどちらも出現する可能性があります。

3)診断
頚椎MRIと頚椎CT、単純レントゲン写真で診断できます。

4)治療
安静、シップ、内服薬、頚椎カラーなどでしばらく様子を見ますが、脊髄神経を圧迫することによる症状はこれらの治療では改善する可能性は低く、手術治療を行う必要があります。
特に本疾患は圧迫が強いことが多く、症状が出てきたら、早期の手術を考慮する必要があります。

5)手術
後方から手術を行うことが大半です。 後方から脊柱管を拡大しますが、脊髄の前方に存在する後縦靭帯骨化病巣に対しては手を着けません。 無理に前方から摘出に行くと脊髄を痛める危険性があるので、安全性の高い後方手術を行います。

6)術後経過
手術後1週間で抜糸し、翌日退院というのが標準的な経過です。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

1)疾患概念
腰椎はこのように骨(5個)と椎間板(骨の間に存在するクッション)が交互に組み合わさった構造をしています。 この骨の真ん中の管腔構造の部分(脊柱管)に硬膜という線維性の膜に包まれた神経が存在します。 ここの部分の神経は頚椎とは異なり、細い神経が束になって集まった形(馬尾神経)になっています。 骨と骨の間の小さな穴からはこの馬尾神経からわかれた神経根と呼ばれる細い神経が出てきます。 神経根は5本あり、それぞれ大腿、膝、足首などに到達し、支配している部分が異なります。 このクッションである椎間板が加齢とともに徐々に機能が衰え、いろいろな力がかかることで壊れてしまい、変形して脊柱管内に飛び出した状態が椎間板ヘルニアです。 中心の馬尾神経を圧迫することもあれば細い神経根のみを圧迫することもあります。
腰椎の模式図です。

頚椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアのMRIを示します。 左の写真では椎間板ヘルニアが飛び出して脊柱管内(白く映るところ)に飛び出して白い部分が途切れたようになっています。 右の写真では馬尾神経を入れている脊柱管内(白く映るところ)に黒っぽい椎間板ヘルニアが入り込んで神経根を圧迫しています。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
椎間板が壊れて変形して飛び出しても、神経を圧迫するほどではなければ腰痛のみの症状が見られます。 しかし、馬尾神経や神経根を圧迫するとお尻の痛み、下肢のしびれ、痛み、力が入りにくいなどの症状が出てきます。

3)診断
診断はMRIで正確に行なうことができます。

4)治療
腰椎椎間板ヘルニアは7-8割の方が牽引、リハビリ、投薬治療により改善するといわれています。 このため、これらの治療でまず症状が改善していくのであれば治療を続行します。 しかし、痛みが非常に強い場合、飛び出したヘルニアが大きくて症状が改善しない場合、麻痺が出現し進行している場合、尿が出にくくなったり、排便のときに力が入りにくいなどの症状がある場合にはなるべく早く手術を行なう必要があります。 このようなときには神経への圧迫が相当強いことが予想され、神経の機能が落ちてしまう前に手術を行ないます。

5)手術治療
手術は全身麻酔で腹這いの状態で行ないます。 体の正中で約2-3cmの皮膚切開を起きます。 椎間板が飛び出している上下の骨(椎弓といいます)を削り、馬尾神経と神経根を内側によけて椎間板ヘルニアを摘出します。 手術時間は1時間半くらいで終わります。

6)術後経過
手術の翌日から歩行していただき、1週間後に抜糸して翌日退院というのが標準的な経過です。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

1)疾患概念
脊柱管とは、椎体、椎弓根、椎弓、棘突起、椎間関節(腰椎の骨の間にある関節)により囲まれる内部の環状構造であり、このなかを馬尾神経が通っています。 つまり、馬尾神経は骨により完全に守られているわけです。 また、この脊柱管の前方の部分には後縦靭帯、後方には黄色靭帯と呼ばれる靭帯(骨同士をつなぎ合わせているゴムバンドのような構造)が骨同士の安定性を維持しています。 原因はこの脊柱管が生まれつき狭い場合か加齢性に脊柱管が狭くなることによります。 年齢を経るごとに背骨に負担がかかるので椎間関節が変性し、黄色靭帯が肥厚し、椎間板が飛び出してきます。 これはすべて加齢現象です。

頚椎椎間板ヘルニア

これは、腰部脊柱管狭窄症のMRIです。
左の写真では突出した椎間板により前方から、肥厚した黄色靭帯により後方から馬尾神経の通る脊柱管(白く写るところ)が狭くなっており、馬尾神経が圧迫されています。 右の写真では肥厚した椎間関節も確認できます。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
間欠性跛行:歩行しているうちに徐々に両下肢がだるくなり、しびれたり力が入らなくなって歩けなくなる状態です。 しばらく休むとまた歩けるようになります。
坐骨神経痛:おしりの痛み、太ももの裏からひざの裏、足背部足底部に至る痛みです。

3)診断
腰椎MRI、CT、単純レントゲン写真で診断します。

4)治療
鎮痛剤、マッサージや電気治療などの保存的治療で改善しない場合には狭くなった脊柱管を広げる手術が必要となります。

5)手術治療
手術は腹這いで行います。 5-6センチの皮膚切開を置いて棘突起と呼ばれる骨の構造を縦に2つに割り、左右に寄せます。これにより、この骨に付着している筋肉を傷つけることなく手術が行えるので、術後の疼痛や筋肉の委縮の防止になります。 椎弓と呼ばれる部分をドリルで削り、神経を圧迫している黄色靭帯、椎間関節の飛び出した部分、場合によっては椎間板を摘出します。 これにより脊髄神経への圧迫を取り除きます。 また、左右に見える神経根を確実に確認して圧迫を取り除きます。 この手術のやり方は安全性が高く、術野も広いので効果も確実です。

頚椎椎間板ヘルニア

術後のMRIですが、術前のMRIと見比べていただくと、丸で囲んだ部分の白い部分の面積が大きくなっており、脊柱管が拡大して神経への圧迫が十分に取れたことが分かります。

6)術後経過
手術の翌日から歩行していただき、1週間後に抜糸して翌日退院というのが標準的な経過です。

不安定腰椎症

不安定腰椎症

1)疾患概念
腰椎の骨同士のつながりが障害を受けることにより骨同士がグラグラに動いてしまっている状態です。 腰椎の骨をつないでいる椎間関節が障害されることにより発生し、椎間板が突出したり黄色靭帯が変性して肥厚してきます。 これにより腰部脊柱管狭窄症と同様に脊柱管が狭窄した状態となり、脊髄神経や神経根が圧迫されます。 脊柱管の狭窄がない場合もあり、その際には腰椎がグラグラ不安定に動くだけなので、椎間板や椎間関節から来る腰痛が主症状となります。

頚椎椎間板ヘルニア

下に示すのは腰椎不安定症のMRIです。
左の写真では脊柱管(白く写る部分)内の馬尾神経が丸で囲まれた部分で突出した椎間板と肥厚した黄色靭帯に圧迫されています。 右の写真では椎間関節内に白く帯状に見える部分は関節が障害を受けている部分です。

頚椎椎間板ヘルニア

腰椎が不安定にすべっているのは単純写真でよくわかります。
丸で囲んだ部分の骨がずれており、後屈から前屈すると上の骨がさらに前方に滑っています。

頚椎椎間板ヘルニア

2)症状
間欠性跛行:歩行しているうちに徐々に両下肢がだるくなり、しびれたり力が入らなくなって歩けなくなる状態です。 しばらく休むとまた歩けるようになります。
坐骨神経痛:おしりの痛み、太ももの裏からひざの裏、足背部足底部に至る痛みです。 腰部脊柱管狭窄症を伴わない場合には腰痛が主症状となります。

3)診断
腰椎MRI、単純レントゲン写真、CTなどを用いて診断します。

4)治療
鎮痛剤、マッサージ、電気療法などの保存的治療で症状が改善しない場合には手術治療が必要となります。
下肢のしびれ、痛み、脱力などの神経症状だけでなく、腰痛が強い場合にも手術を考慮します。

5)手術治療
手術は腰椎に不安定性が存在するので、腰部脊柱管狭窄症のように骨を削るだけの手術では不安定にグラグラ動く状態は治療できません。このため、後方からチタン製のピンを打ち込み、椎間板を除去してスペーサーと呼ばれる金属片を入れて腰椎が動かないように椎体間固定を行います。
術後の写真ですが、このように金属のピンでずれた骨を元の位置に戻して固定します。 丸で囲んだ部分の馬尾神経が圧迫がとれて白い隙間の部分が増えているのが分かります。

頚椎椎間板ヘルニア

正式名称

脊椎変性疾患

初期症状

発症部位により様です。

手術内容

発症部位により様々です。詳しくは上記各病症名の手術治療をご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

脊髄髄内腫瘍とは

脊髄髄内腫瘍とは

●脊髄の内部から発生する腫瘍です。
●脳腫瘍と比較すると発生頻度はかなり少ないです。
●手術で腫瘍を切り取るためには脊髄を切開して行う必要があるため、高い技能が必要です。
●手術後の運動・感覚障害の増悪をなるべく防ぐために、手術中には多チャンネルの神経生理モニタリングを行いながら、顕微鏡を用いて慎重に手術を行います。
●そのため、この疾患の診療に対応できる医療機関は決して多くはありません。
●この疾患に十分経験がある医師のもとを受診することをお勧めいたします。
●組織学的には、神経膠腫が最も多く、血管芽腫、脂肪腫、髄内神経鞘腫、海綿状血管腫、転移性脊髄内腫瘍などがあり、比較的悪性度が低いものから、高悪性度のものまで多岐にわたります。
●脊髄髄内腫瘍の場合、一部の組織型の腫瘍では全摘出は困難です。
●また、悪性腫瘍の場合もあります。
●そのような場合には手術後に、薬物治療や放射線治療など、追加の治療が必要になることがあります。

症状

症状

●症状は腫瘍の部位や大きさ、組織型により多岐に渡ります。
●具体的には、首や背中の痛みといった一般的な症状に加え、手足のしびれ、痛み、麻痺、排尿排便障害などが挙げられます。
●腫瘍の増大に伴い、症状は徐々に悪化していくことがほとんどです。

診断

診断

●一般的な脊椎脊髄疾患と同様にレントゲン検査、CT検査、MRI検査を実施します。
●さらに、術前に腫瘍の悪性度を推定するため、Positron Emission Tomography(PET)検査を追加で行うこともあります。

神経膠腫(グリオーマ)とは

神経膠腫(グリオーマ)とは

●脳・脊髄の神経細胞から発生する腫瘍です。
●悪性度はグレード1〜4の4段階に分けられ、数字が大きくなるほど悪性度が高くなります。
●治療戦略としては、可能な限りたくさんの腫瘍を手術で摘出し、悪性度によっては術後に放射線治療や抗がん剤治療を追加します。
●この腫瘍は周囲の正常な脊髄組織に浸潤性に発育するため、腫瘍と正常脊髄組織の境界が不明瞭です。 そのため、摘出度合いを優先させると、正常な脊髄まで損傷して麻痺や感覚障害の増悪をきたします。 手術後の障害の増悪をなるべく少なくしつつ、なるべくたくさんの腫瘍を摘出するため、手術中には神経生理モニタリングを行いながら、摘出を進めます。
●腫瘍の摘出度と、病理組織診断によって術後の治療方針を決めます。
●腫瘍の悪性度がグレード1および2では、残存腫瘍が多い場合は放射線療法や化学療法を追加することがありますが、残存腫瘍が少ない場合は経過観察で定期的に検査を行う場合もあります。
●腫瘍の悪性度がグレード3および4では、摘出度合いに関わらず、放射線治療や化学療法を追加することがほとんどです。
●当科では脳腫瘍グループと連携して、悪性度に関係する腫瘍の遺伝子変異を同定し、術後の治療に役立てる取り組みを行っています。

脊髄上衣腫とは

脊髄上衣腫とは

●髄内腫瘍のうち最も頻度が高い腫瘍です。
●手術用顕微鏡下の手術にて、脊髄の後正中を切開して、腫瘍を摘出します。
●腫瘍と正常脊髄の境界が明瞭なことが多く、全摘出あるいは亜全摘が可能です。
●部分摘出の場合、術後に放射線治療を追加する場合もあります。
●グレード2のものが最も多く、腫瘍を全摘出できれば腫瘍を制御できることが多いです。
●稀に、高悪性度の腫瘍の場合もあります。

●上衣腫の一例

脊髄上衣腫とは

下は実際の手術時の顕微鏡下の写真です。
白く見えるのが脊髄神経で、灰色にみえるのが上衣腫という脊髄腫瘍です。

脊髄上衣腫とは

正式名称

脊髄髄内腫瘍

初期症状

状は腫瘍の部位や大きさ、組織型により多岐に渡ります。
具体的には、首や背中の痛みといった一般的な症状に加え、手足のしびれ、痛み、麻痺、排尿排便障害などが挙げられます。

手術内容

担当医から直接話を聞いた上で決定していきます。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

脊髄硬膜内髄外腫瘍

脊髄硬膜内髄外腫瘍

●硬膜内で脊髄の外に存在する腫瘍です。 そのうち約80~90%が髄膜腫と神経鞘腫です。 その他にも脂肪腫、パラガングリオーマ、リンパ腫、悪性末梢神経鞘腫、孤立性線維性腫瘍、播種性転移性腫瘍などが生じます。 ほとんどが良性腫瘍ですが悪性腫瘍の場合もあります。

症状

症状

●腫瘍が脊髄や神経根を圧迫することにより、脊髄症や神経根症といった神経症状(手足の痛みや痺れ、麻痺など)を呈する可能性があります。

診断

診断

●神経診察の後にCT検査やMRI検査で見つかることが多く、画像検査のみでおおよそ診断できることが多いですが、手術による病理検査を行わなければ確定診断を得ることができません。

治療

治療

●治療は腫瘍の性質によって大きく異なります。 症状が明瞭であり、神経への圧迫が高度であれば基本的には手術による腫瘍摘出を行います。 また軽度であっても、診断を確定するために手術を行う場合があります。 無症状の場合は経過を定期的に観察することもあります。
●良性腫瘍の場合は術後は定期的な画像検査のみですが、悪性腫瘍だった場合には放射線治療や抗がん剤治療を術後に追加します。
●手術は通常は後方からアプローチして椎弓切除または椎弓形成を行い、顕微鏡下に腫瘍を摘出します。

神経鞘腫とは

神経鞘腫とは

●神経鞘腫は全脊髄腫瘍の約30%と頻度の高い脊髄腫瘍で、脊髄神経に発生する境界明瞭な腫瘍です。 神経根より発生する腫瘍であり、多くは後根由来です。 40~50台くらいの年齢の方に多いとされています。 周囲組織へ浸潤することはないですが、圧迫された骨が陥凹することがあります。
●神経根由来の痛みや脊髄を圧迫して手足の麻痺を起こします。 進行がゆっくりであるため、症状出現から診断まで平均1から2年経過するともいわれています。
●ほとんどの腫瘍が硬膜内髄外ですが、稀に髄内に発生する事や、硬膜外に発生する事があります。
●硬膜内と硬膜外にまたがるダンベル型腫瘍は頸椎で多いといわれています。
●治療は摘出術です。 腫瘍の発生母地となっている神経根を同定し切断し、一塊として摘出します。

髄膜腫とは

髄膜腫とは

●髄膜腫は全脊髄腫瘍の約20%と神経鞘腫とならんで頻度が高い脊髄腫瘍です。 中高年の女性の胸椎レベルに発生することが多く、基本的には良性腫瘍です。 くも膜の髄膜皮細胞より発生すると考えられています。
●症状は疼痛(背部痛や根性痛)、運動障害や歩行障害、異常感覚を呈する事が多いです。 進行はゆっくりであることが多いです。
●MRIでは通常、脊髄実質と等信号であり、ガドリニウム造影剤ではほぼ均一に増強されます。 腫瘍の裾がひろがるように硬膜に沿って増強効果を認めるdural tail signが特徴的です。
●ほとんどは硬膜内髄外腫瘍ですが、稀に硬膜内外に進展し砂時計状の形状になることがあります。
●手術による腫瘍摘出で治癒が期待できることが多いです。 実際の手術中の所見として発生起源は神経根が硬膜を通過する部分、root sleeveの刺入部であることが多いです。

実際の画像、手術所見

実際の画像、手術所見

●実際の患者さんのMRI画像です。 A-Cは術前の画像で腫瘍が脊髄を圧迫しています。 腫瘍摘出後はDの画像のように脊髄の圧迫はなくなっていることがわかります。 (Tomoya Nishii et al. J Spine Surg 2021;7(4):532-539
https://dx.doi.org/10.21037/jss-21-83)

実際の画像、手術所見

●次の画像は、実際の患者さんの手術中の顕微鏡所見です。 腫瘍摘出前はくも膜という脊髄を包む膜と伴に腫瘍が脊髄外側に存在していることがわかります。 (A)脊髄を損傷しないように、慎重に操作しながら腫瘍を摘出していきます。 (B)(Tomoya Nishii et al. J Spine Surg 2021;7(4):532-539 https://dx.doi.org/10.21037/jss-21-83)

実際の画像、手術所見

脊髄動静脈奇形とは

脊髄動静脈奇形とは

●心臓から出た血液は、通常動脈から毛細血管へ流れそこで各臓器に酸素などを受け渡した後、静脈を通って心臓に戻ります。
●動静脈奇形と呼ばれるものは、動脈から静脈へ直接つながってしまう病態です。
●脊髄にこの動静脈奇形が起きると、静脈圧が高くなって周囲の血液が静脈に戻れなくなってしまい、脊髄の血液循環障害が出現し、脊髄が腫れて障害をきたします。
●また、壁の薄い静脈に高い圧が加わり、静脈が破れてくも膜下出血や脊髄出血を起こすことがあります。
●時に、この拡張した静脈が脊髄を圧迫して神経症状をきたすことがあります。

症状

症状

●症状は通常は手足のしびれ、運動麻痺、排尿排便障害などが徐々に進行します。
●くも膜下出血や、脊髄髄内出血を伴う場合には突然、症状が出現することもあります。
●他の一般的な脊椎疾患(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)と症状から区別することが難しいため、なかなか診断に至らないこともあります。

診断

診断

●一般的な脊椎脊髄疾患と同様にレントゲン検査、CT検査、MRI検査を実施します。
●細かい血管の評価のためには造影剤を用いた脊髄血管造影撮影(カテーテル検査)が必要です。
●この検査により血管の走行を正確に把握して治療計画を立てます。
●造影剤を使用したCT検査も補助的に使用します。

治療

治療

●治療は動脈と静脈が吻合している部位(シャント部)を閉塞して動脈から静脈へ直接血液が流れ込む状態を止めることです。
●カテーテルによる血管内塞栓術と手術による閉塞の2種類の方法があります。
●病変のタイプにより2種類の方法のうちどちらかが適切が判断し、治療にあたります。
●場合によっては血管内塞栓術と手術を併用して治療にあたることもあります。

外科的手術について

外科的手術について

●全身麻酔下で、腹ばいの姿勢で行います。
●皮膚切開をして、背骨の後ろの方の骨(椎弓)を外して硬膜を露出します。
●顕微鏡を使用して、硬膜を切開して脊髄を露出。異常血管を同定します。
●手術中には神経生理モニタリングを行いながら、顕微鏡を用いて慎重に手術を行います。
●正確にシャント部を同定して遮断すれば手術は完遂できますが、1回の手術では全てを処置できない場合もあります。
●なぜなら、疑わしい血管を片っ端から遮断して、仮にそれが正常な血管だった場合は麻痺や感覚障害など重篤な後遺症を残すことがあります。
●そのため、確実なシャント部の処置のみを行い、手術後に再検査を行った上で再手術を行うこともあります。

正式名称

脊髄動静脈奇形

初期症状

通常は手足のしびれ、運動麻痺、排尿排便障害などが徐々に進行。
※他の一般的な脊椎疾患(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)と症状から区別することが難しいため、なかなか診断に至らないこともあります。

手術内容

詳しくは上記、外科的手術についてをご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

脊髄髄空洞症

脊髄髄空洞症

●脊髄の中に脳脊髄液が溜まる病気です。 脳や脊髄を循環している脳脊髄液が滞留し空洞ができます。
●病変は第2頚髄から第9胸髄の間に存在することが多いですが、頭側または尾側へ進展することがあります。
●キアリ奇形という小脳が生まれつき脊髄の方へ落ち込んでいる病気が多く原因となることが多いですが他の疾患が原因となることもあります。
●以下に代表的な疾患を挙げます。

1. 脳脊髄液流通障害
キアリ奇形
感染、化学性、出産時外傷、くも膜下出血などによる癒着性くも膜炎。
上衣種または血管芽腫などの腫瘍、くも膜嚢胞、ダンディーウォーカー症候群、後頭部脳瘤など。
頭蓋底陥入症

2. 外傷、出血、感染、椎間板変性疾患、脊柱管狭窄症などによる脊髄への損傷

3. 神経管閉鎖障害

4. 特発性(原因不明)

症状

症状

●空洞は脊髄の中心部にできるため、最初は上肢のしびれや痛み、感覚異常などがみられます。
●さらに進行すると、筋力低下、排尿または排便の障害を呈し、階段状に進行することが多いです。
●学童期に脊柱側弯症を契機に脊髄空洞症を診断される患者さんもいます。
●また、無症状で画像検査によって偶然診断されることがあります。

診断

診断

●MRIが重要です。
●ガドリニウム造影剤を使用したMRIは腫瘍の診断に有用です。
●脊髄造影検査、髄膜炎、脊髄損傷などの既往歴から原因を検索します。
●キアリ奇形、大槽部または脊髄周囲くも膜下腔開存の有無を検索します。

治療

治療

●無症状の場合はすぐに手術は行わず、定期的画像検査をすることが多いです。
●症状悪化または難治性の痛みを認めるならば手術を推奨します。
●手術方法は疾患により様々です。

【診断-手術法】
キアリⅠ型奇形-大孔部減圧術
第四脳室からくも膜下腔への髄液流出障害-ガードナー手術
腫瘍など-摘出術
大槽くも膜下腔癒着-癒着剥離術
非交通性水頭症-第三脳室開窓術

代表的な手術方法

代表的な手術方法

●空洞シャント術:全身麻酔、腹臥位で行います。 空洞の存在する部位に皮膚切開をおき筋肉を剥離します。 手術用顕微鏡下に、脊椎後方を削除し脊柱管内に入ります。 脊髄を包んでいる硬膜を切開し、脊髄に切開を加え、空洞内にチューブを挿入します。 そのチューブにより空洞内の脳脊髄液を他の部位に流します。 空洞-くも膜下腔シャントが多く、他に空洞-胸腔シャント、空洞-腹腔シャントがあります。

●大孔部減圧術: 全身麻酔、腹臥位で行います。 後頚部正中に皮膚切開をおき筋肉を剥離し、後頭骨下方または第1頚椎後方を削除します。 脳または脊髄を包んでいる硬膜を切開し、筋膜または人工硬膜を追加し縫合します。 キアリ奇形I型の患者さんでは空洞シャント術を行わなくても、頭蓋骨から脊椎へ移行する部分の硬膜下スペースを広げることで、脳脊髄液の流れが改善し、空洞症も改善するこが多いです。 そのため、空洞症を伴うキアリ奇形I型の患者さんではまずは、この手術を行い、空洞症の経過をみて必要な患者さんに対してのみ空洞シャント術を追加で行います。

治療効果

治療効果

●手術後に神経症状は安定することが多く、改善することも多いです。
●すぐに症状が改善しなくても、一年くらいかけてゆっくりと症状が改善する患者さんもいます。
●ただし、どの程度の症状が改善するかは患者さんの術前の症状や罹患期間によって異なります。
●一般的に、運動障害は感覚障害より改善しやすいです。
●特に空洞症で罹病期間が長い成人の場合、脊髄空洞が縮小しても感覚障害または筋萎縮は改善しにくいです。
●一旦症状がよくなった後に、再発した場合、再手術が必要となることがあります。

正式名称

脊髄髄空洞症

初期症状

最初は上肢のしびれや痛み、感覚異常などが。さらに進行すると、筋力低下、排尿または排便の障害など。

手術内容

手術方法は疾患により様々です。詳しくは上記、治療をご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。

三叉神経痛の概要

三叉神経痛の概要

三叉神経痛とは顔に痛みの出る病気です。
顔の感覚(触った感覚、痛い、冷たい、熱いなど)を脳へ伝える神経が三叉神経ですが、この三叉神経が何らかの原因で痛みを起こしてしまう状態が三叉神経痛です。
痛みは典型的な特徴があります。 顔の片側に、非常に強い痛みが、電撃のように一瞬走ります。 痛みは一瞬で、長くても数秒~十数秒です。 顔の両側が痛い場合や、痛みが何分も継続することはまれです。
大抵の場合、毎回これをすると痛むといった動作があります。 洗顔、化粧、ひげ剃りなど顔を触る動作や、物を噛む、冷たい水を飲む、歯磨きなど口の中の刺激でも起こります。 特に口の中の痛みは虫歯と間違われやすく、最初に受診した歯科医で虫歯のような歯を抜かれてから三叉神経痛だとわかる場合もあり注意が必要です。

三叉神経痛の原因

三叉神経痛の原因

三叉神経は脳の中の脳幹と呼ばれる場所から顔の皮膚までを通る神経です。 この通り道に神経を圧迫するものがあると、三叉神経を刺激して三叉神経痛を引き起こします。
原因の多くが血管による圧迫です。 特にドクドクと拍動する「動脈」が、三叉神経と脳幹の境目あたりで神経を圧迫している場合に痛みを引き起こします。 血管の圧迫による三叉神経痛を特に特発性三叉神経痛と呼びます。 その他には腫瘍、動脈瘤、動静脈奇形などの他、帯状疱疹も原因となります。

三叉神経痛が疑われた場合どうするか

三叉神経痛が疑われた場合どうするか

「どんな痛みか」、「何をすると痛いのか」など痛みについて詳しく問診することにより、大部分が三叉神経痛と推測することができます。 三叉神経痛が疑われた場合、MRIの検査で三叉神経を圧迫する血管や腫瘍などがないかを確認する必要があります。 また、内服薬(カルバマゼピンなど)で痛みが改善する場合が多いため、次の項で説明するように内服薬治療を開始します。 逆に内服薬で改善が見られない痛みは三叉神経痛でない可能性が高くなります。

三叉神経痛の治療

三叉神経痛の治療

まず、MRIで脳腫瘍や動脈瘤、動静脈奇形など、そもそも治療が必要な原因が見つかれば、その治療を優先します。
ここでは、血管の圧迫による特発性三叉神経痛の治療について述べます。

① 内服薬
三叉神経痛はカルバマゼピンという内服薬がよく効くため、まずは内服薬による痛みの緩和から始めます。 カルバマゼピンはてんかんの薬ですが、神経の伝導を抑えることで痛みを軽減します。 ただし、神経に血管が当たっているという一番の原因は改善しません。 時に副作用も出る薬であり、眠気やふらつきなどは比較的多く見られるため、最初は少ない量から始めて少しずつ量を増やしていきます。 また、皮疹などのアレルギー症状も他の薬に比べて起こりやすい特徴があり、粘膜を含めた全身の皮膚に発疹や水ぶくれができるStevens-Johnson 症候群を引き起こすこともあるため注意が必要です。 内服継続が困難な場合は次に説明する手術が必要になってきます。 また、内服開始初期は痛みが軽減できていた場合も、徐々に痛みが再発してくることがあり、内服薬で痛みがコントロールできない場合は手術を考慮します。

② 手術(微小血管減圧術)
特発性三叉神経痛は動脈が三叉神経に当たり、ドクドクと拍動を与え続けることで起こります。 微小血管減圧術と呼ばれる手術では、この神経と動脈が当たらないように固定します。
具体的には全身麻酔で横向きの体制となり、耳の後ろあたりの後頭部を切開した後、頭蓋骨に数cmの穴をあけ、そこから顕微鏡で覗いて、接触している神経と動脈を剥がし、二度と当たらないように固定します。
この手術では、神経と血管が当たっているという根本的な原因を解決できるため、80~90%の患者さんで症状が改善すると言われています。 しかし、全身麻酔での開頭手術であるため合併症が起きる可能性もゼロではありません。 微小血管減圧術特有の合併症としては、顔のしびれや感覚の低下(三叉神経そのものの障害)、複視・難聴・顔面の動きの麻痺(近くを通っている滑車神経・内耳神経、顔面神経の障害)、ふらつきやめまい(小脳の障害)などがあります。 合併症の危険性は高くはありませんが、まずは内服薬治療を行って、症状が継続する場合に手術を考えるという流れが一般的です。

③ 放射線治療(ガンマナイフ)
三叉神経と動脈が当たっている部分に1点集中で放射線を当てると、三叉神経痛の痛みが改善することがわかっています。 ただし、有効率は50~70%程度と言われており、手術よりも治療効果は劣ります。 高齢であったり他の病気があったりして全身麻酔の手術ができない場合や、手術を行ったが痛みが継続する場合などに考慮されます。

④ 三叉神経ブロック
痛みを伝えている三叉神経そのものを麻痺させてしまう治療です。 神経を麻痺させることにより痛みは改善しますが、三叉神経本来の役割である顔の感覚も片側だけですが無くなります。
方法としては局所麻酔の注射や加熱による焼灼などがあります。 局所麻酔の場合は麻酔が切れたら顔の感覚は戻りますが、痛みも元通りに戻ります。

顔面けいれんとは

顔面けいれんとは

●顔面けいれんとは自分の意志に関係なく顔の筋肉がぴくぴくとけいれんしてしまう状態です。
●ストレスや人前での緊張、眼精疲労、強い閉眼などによって誘発されやすく、症状は片側の眼周囲の軽いぴくつきから始まり、ひどくなると頬や口元、首にまで広がってくることがあります。
●通常は片側性で、両側性は稀です。
●けいれんが長期間続くと、顔面麻痺を起こしていることもあります。

原因

原因

●ほとんどの顔面けいれんは顔面神経が血管によって圧迫されていることにより起こります。
●MRI検査で神経が血管に当たっていることが確認できれば、それが原因血管といえます。
●稀に顔面神経を腫瘍が圧迫して痙攣を誘発させていることもありますし、場合によっては強固なくも膜によっ神経が捻れていることが原因のこともあります。

顔面けいれんの治療方法

顔面けいれんの治療方法

腫瘍などが原因でない場合には治療しなくてもいいことも多いですが、患者さんが気になる場合に治療を考慮します。

① 薬物治療
●初期の顔面けいれんには効果があります。

② ボツリヌス治療
●ボツリヌス毒素をそれぞれのけいれんの部位に注射します。 顔面神経から顔面筋への神経伝導を抑制することにより症状を改善します。 一度の注射により平均3~4か月効果が持続します。
●副作用として軽度の麻痺がでることがあります。 また症状が完全になくなるわけではなく、症状を抑えるには繰り返し治療を行う必要があります。

③ 手術(微小血管減圧術)
●顕微鏡でみながら直接血管の神経への圧迫をとる方法です。
●全身麻酔で行います。
●耳の後ろの皮膚を5㎝ほど切開し、頭蓋骨に小さな穴をあけます。 小脳と頭蓋骨の間から侵入し、顔面神経と原因血管の間を剥離して隙間を作り、当たらないようにして固定します。
●80~90%で症状は完全になくなります。
手術後すぐに症状がなくなる場合と数カ月ほどかかってなくなる場合があります。 5~9%で再発することがあります。
●手術の合併症として、聴神経障害や顔面神経麻痺、手術の部位から髄液が漏れたりすることがあります。

正式名称

顔面けいれん

初期症状

片側の眼周囲の軽いぴくつきから始まり、ひどくなると頬や口元、首にまで広がってくることがあります。

手術内容

詳しくは上記、顔面けいれんの治療方法をご覧下さい。

入院期間

術後、約3週間程度の入院期間が必要です。

通院期間

退院後、毎月1回程度の通院機関が必要です。