機能外科・てんかん外科グループ

てんかん焦点診断の新しいアプローチ、脳波-MRI同時記録(EEG-fMRI)について

「てんかん」を持っている患者さんの中で、コントロールが薬剤で十分されず、手術治療を必要とする方がおられます。脳の中で、てんかんを起こしている原因となっている場所を「てんかん焦点」と呼び、この焦点を正確に同定して手術で切除する事が、より良い手術結果を導く鍵となります。この焦点診断の為に、我々は新しいアプローチとして、「脳波-MRI同時記録(EEG-fMRI)」を行っています。

EEG-fMRIは脳波を記録しながら、機能的MRIを撮像する方法です。患者さんにはキャップ型の脳波電極をかぶってもらい、この状態でMRIを30分間程度撮影します(図1)。脳波でてんかん性活動をとらえ、その活動と同時に起きている脳内の磁気信号の変化をMRIで捉え、どこでそれが生じているかを検討する事で、焦点の場所を同定します(図2)。海外からは、焦点の場所を決めるのに有用であり、より良い手術結果を導いたとの報告が数多くあります。

図1:脳波-fMRI同時記録用のMRI対応キャップ電極の装着の様子
<図1:脳波-fMRI同時記録用のMRI対応キャップ電極の装着の様子>

図2:脳波-fMRI同時記録の例: 推測された焦点(白枠)付近に活動の上昇
<図2:脳波-fMRI同時記録の例: 推測された焦点(白枠)付近に活動の上昇>

この方法は、MRIの磁場変化の強い状況で正確に脳内の電気活動を計測する為、高い技術力を要し、設備も高価で大掛かりとなります。その為、海外では実績のある方法ですが、日本では少数の施設にしかありません。我々は、名古屋大学脳とこころの研究センター・大幸地区https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/)に本機器を有しております。

この検査は保険診療外です。そこで、我々は現在、その有用性を実証するための臨床研究を、医療倫理委員会の承認を得て、実施しております(承認番号)。対象となる患者さんは「内側側頭葉てんかん」、「MRI病変を有する/有さない焦点性てんかん」です。本研究対象と合致し、本研究の趣旨を理解していただき、研究参加に同意いただけた場合に、本検査を実施いたします。(尚、本研究における金銭のやり取りはございません。)

この検査を希望する場合は、主治医の先生とご相談の上、紹介状を持参して名古屋大学脳外科の機能外科グループの外来にお越しください(月曜日一診:前澤、金曜日一診:中坪)。

定位脳手術ロボット-ニューロメイトを使った手術について

脳内で、ある部位の座標を定め、そこに正確に針を刺す事や、電極を挿入する手術を定位脳手術といいます。例えば、パーキンソン病で、電極を置いて刺激する事で病的な活動を抑制したり(deep brain stimulation; DBSといいます)、破壊したりする方法です。最近では、てんかんの焦点を決めるために、脳の深いところに電極を挿入して、そこからてんかんの波を捉える事で、てんかんの焦点を同定する方法が行われたりします(stereotactic electroencephalography, SEEGといいます)。

この定位脳手術で重要なことは、定められた場所に正確に電極や針を挿入する事です。人間の行う事にはどうしても小さな誤差が生じる可能性があります。これを限りなくゼロにするのが、この定位手術ロボット、ニューロメイトです(Neuromate, Renishaw社、図3)。

図3:定位脳手術ロボット、ニューロメイト(レニショー)
<図3:定位脳手術ロボット、ニューロメイト(レニショー)>

ニューロメイトは、コンピュータにて、標的部位に到達する為のベクトルを正確に計算し、電極や針を、緩むことなく堅固に保持し、コンピュータ制御により、高い自由度で円滑に作動して、標的部位に挿入します。90年代に、主にヨーロッパで多く使用されて、世界に広く普及しました。日本では、最近になり、最新のモデルが名古屋大学医学部付属病院に導入され、2015年に薬事承認を得ました。2017年現在、国内で、この装置を実際に使用しているのは、名古屋大学しかありません。

現在、我々機能外科グループでは、パーキンソン病や他の不随意運動に対するDBS(図4)や、てんかん焦点診断の為のSEEGに利用しております。非常に高い精度を維持する事が出来て、手術時間の短縮に有用です。この様な手術手技の改良は、最終的には患者さんの、より良い治療成績を導くと考えています。

図4:ニューロメイトを使った視床下核へのDBS
<図4:ニューロメイトを使った視床下核へのDBS>

超音波集束装置(FUS)を使った本態性振戦の治療について

コップを持つ時や、字を書こうとした時に手がふるえてしまう病気の中で、本態性振戦があります。原因ははっきりわかっていませんが、ふるえを起こす脳内回路については、段々と明らかとなり、更に、その一部を遮断すると、症状が改善する事も分かってきました。これを、頭蓋骨に穴を開けず、脳内に針を刺す事なく、外から超音波をあてる事で行う治療が、超音波集束治療です(MR guided Focused Ultrasound therapy: FUSといいます。図5)。

図5:超音波集束装置を使った本態性振戦の治療の様子
<図5:超音波集束装置を使った本態性振戦の治療の様子>

超音波とは2万ヘルツ以上の振動数を持つ、耳では聞こえない音波の事です。指向性が強く、深いところまで正確に到達する事ができます。そして、吸収されると熱エネルギーが発生します。複数の発生源から脳内の一部に集中して照射する事で、その部分を熱で破壊する事が可能です。

この超音波の性質を利用して、本態性振戦の原因となっている脳内の異常ネットワークの中継点MRIで同定して、これに照射し破壊して、症状の改善を図ります(図6)。本治療に関しては、海外で大規模な前向き研究が行われ、その有用性が実証されています。

図6:超音波集束装置を使った本態性振戦の治療の模式図
<図6:超音波集束装置を使った本態性振戦の治療の模式図>

この超音波集束装置が2017年、名古屋大学の大きな関連病院の一つである、名古屋共立病院(名古屋市中川区)に導入されます。名古屋大学機能外科グループは、この治療を全面的にバックアップしています。現在のところ、本治療に対する保険適応はなく、自費治療となります。興味のある方は、名古屋共立病院のふるえ外来にお問い合わせください(http://www.kaikou.or.jp/kyouritsu/shinryo_fus.html)。名古屋大学脳神経外科 機能外科グループの外来へ問い合わせていただいても結構です。