脳と心の研究センター

概要紹介

脳とこころの疾患に関する神経基盤の解明と、新しい診断方法、治療方法の開発

名古屋大学脳とこころの研究センターは、様々な診療科、学部、研究施設より構成される全学組織であり(図1)、脳とこころに関する研究を、異分野融合形態をとりながら進めていく事を目的としています。大規模なコホート(研究対象集団)を構築し、名古屋大学を中心として、この東海エリア地域に根ざした一大コンソーシアム(連携組織)を形成します。大きな使命としては、① 発達、加齢に伴う脳とこころの構造、機能変化や神経回路の全容の解明、② 脳とこころの疾患の病態解明と治療方法の開発(次世代創薬)、③ 次世代の研究者及び医療従事者の人材育成が挙げられます。
脳神経外科はこのセンターの創立以来、特に脳とこころの疾患の病態解明と治療法の開発の部分で中心的役割を担っています。外科的な介入の利点を生かした数多くの臨床研究が現在進行中です。脳神経外科における革新的な診断、治療方法の開発につながる事を目指しております。
詳細は、脳とこころの研究センター公式Homepage: https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/でご覧ください。

脳と心の研究センター
<図1>

スタッフ一覧

現在の名古屋大学脳神経外科のメンバー

  • 脳神経外科 大学院生柴田 昌志Masashi SHIBATA(平成19年卒)
  • 脳神経外科 大学院生加藤 祥子Sachiko KATO(平成22年卒)
  • 脳神経外科 大学院生石崎 友崇Tomoya ISHIZAKI(平成23年卒)
  • 脳神経外科 大学院生高井 想生Sou TAKAI(平成24年卒)

関連病院在籍メンバー

  • 福島県立医科大学
    脳神経外科准教授
    藤井 正純Masazumi FUJII(平成5年卒)

研究概要

研究方針

1. 安静時fMRI、EEG-fMRI、MEGを用いた高次脳機能ネットワーク解析と次世代の脳外科手術への展開

近年、欧米のHuman Connectome Projectに代表される画像技術は大きく進歩しています。我々は、この中でも安静時fMRI(図2)、脳波MRI同時記録(EEG-fMRI)(図3)、DTI-トラクトグラフィ(図4)、MEGを使った最新画像研究に注目しており、これらで得られた新しい撮像技術、解析技術を脳神経外科手術に応用する頃を目指しています。特にネットワーク的な考え方(hodotopy、図5)を取り入れた、新たな評価法の確立を目指しています。

図2
<図2>

図3
<図3>

図4
<図4>

図5
<図5>

2. 機能連絡解析を駆使したてんかん外科コネクトームマップと定位的脳波記録による実証

非侵襲的焦点及び伝播経路診断の為のてんかん外科コネクトームマップを新規に開発し、ステレオ脳波記録で実証する計画を立てています。これには①我々が既に先行実施している脳波-安静時 fMRI 同時記録と脳磁図を、更に新規な手法で解析し、てんかん性の機能連絡変化を捉える事で焦点及び伝播経路を推測する、②解析結果からてんかん原性域、伝播経路、症状発現域、機能低下領域を表示した術前マップを新規に作成する、③定位手術ロボットで脳内電極を安全かつ正確に留置し、電気生理学的にマップの整合性を実証する(図6)、の三つを達成目標としています。本研究の達成は、てんかんネットワークの解明に貢献し、異常回路遮断と正常回路回復を目的とした新規のてんかん制御手術の実現を促進するものと考えます。

図6
<図6>

3. 多様なmodalityによる振戦の病態解明とFUSやDBSにおける病態修飾

本態性振戦やパーキンソン病の振戦症状の理解にはネットワークとしての理解が必要であり、また非運動症状や、個体間の症状の多様性を解明する為にもこのアプローチが必要です。この様な各病態の背景にあるネットワーク異常を安静時fMRIやMEGによる解析で明らかにし、従来の視床凝固術や脳深部刺激術に加え、近年日本でも臨床導入されたMRガイド下集束超音波治療(図7)により、ネットワークがどのように修飾され、症状の改善に結びつくのか解明することが本研究の主題です。本研究の達成により、ネットワーク的な病態の解明と治療法の選択に有用なバイオマーカーの確立を目指しています。

図7
<図7>

他にも連携研究者による研究で次の様なものがあります。
  • 安静時機能的MRIによるもやもや病患者の脳神経ネットワークの解析(岡本奨先生、坂本悠介先生)
  • 安静時機能的MRIを使用した特発性水頭症の術前後ネットワークの変化(竹内和人先生)
  • 術中情報を統合した4Dナビゲーション・手術支援プラットホームの開発(藤井正純先生)
  • リアルタイム機能的MRI-脳波同時測定装置を用いた時間的空間的脳内神経回路解析(渡辺宏久先生)

研究成果

脳外科では、てんかん外科を中心とした研究を行ないました。大幸の脳とこころの研究センターで可能な安静時機能的MRI、MEG、EEG-fMRIを使っててんかんの患者におけるコネクトーム解析を術前に行ないました。これらの検査には解析の改良を行なう(安静時fMRIではhub解析し、大規模健常人データと比較する、EEG-fMRIでは新規開発したsub-second解析、MEGではDS(distribution source)に更に統計処理を加える)事で、てんかんの異常ネットワークを更に高い検出力で検出しました(図8)。その結果については、実際の手術の際に、ニューロメイトを使ったSEEG(stereotactic EEG)(図9)や、覚醒下手術(図10)にて実証を試みております。
 もう一つの臨床研究は、超音波集束装置(FUS)による本態性振戦の治療です(図11)。視床vim核を超音波にて定位的に凝固する本治療は、名古屋共立病院と連携して2017年7月より開始し、2019年春の時点で25例実施しています。初期効果は全例で認められ、6M後でも平均72%の振戦改善率を認めております。研究としては、凝固するlesionと改善率の位置の検討や、安静時fMRIを使ったネットワークの評価について現在解析中です。また、2018年の12月にはFUSの第一回の全国的な研究会を我々のチームが主幹となり開催しました。全国より50名程度の定位手術の専門家が集まる会となり盛況でした。

その他の研究の成果も、順次報告していきます。脳神経外科分野以外の研究で、ご興味があれば、脳とこころの研究センターのページもご覧ください。
脳とこころの研究センター公式Homepage: https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/

図8
<図8>

図9
<図9>

図10
<図10>

図11
<図11>

共同研究

センターでの研究はすべて、他施設融合型、横断型であり、いわゆる共同研究となっています。

主な業績の紹介

【和文】

  1. 前澤 聡, バガリナオ・エピファニオ, 中坪 大輔ら.機能的脳神経外科最新の動向 EEG-fMRIを用いた焦点診断(総説). 脳神経外科, 2018, 46(1), 67-79
  2. 石崎 友崇, 前澤 聡. 神経機能マッピング・モニタリング入門, 神経機能マッピング・モニタリングの基本と応用を学ぼう-てんかん手術を企図した脳機能画像ネットワーク解析(総説). 脳神経外科速報, 2018, 28(1), 27-33
  3. 江夏 怜, 佐久間 潤, 前澤 聡ら.神経機能マッピング・モニタリング入門, 神経機能マッピング・モニタリングの現状と未来展望(総説).脳神経外科速報, 2018, 28(1), 6-14
  4. 藤井 正純, 前澤 聡, 岩味 健一郎ら.脳機能解剖の多次元解析, 大脳白質解剖と言語(総説) 脳神経外科ジャーナル, 2016, 25(5), 396-401
  5. 二村 美也子, 古場 伊津子, 前澤 聡ら.覚醒下開頭術中に二ヵ国語共通領域と一言語特異的領域が確認されたバイリンガルの一例.高次脳機能研究, 2015, 35(4), 356-62
  6. 前澤 聡, 藤井 正純, 若林 俊彦. 検査からみる神経疾患,脳神経外科手術におけるhodotopyに基づいた脳機能評価(総説).Clinical Neuroscience, 2015, 33(12), 1426-8

【英文】

  1. Ishizaki T, Maesawa S, Nakatsubo D, et al. Anatomo-electro-clinical correlations of hypermotor seizures with amygdala enlargement. Epilepsy Behav Case Rep 2019,11,10-3
  2. Yoneyama N, Watanabe H, Maesawa S(16/18),et al. Severe hyposmia and aberrant functional connectivity in cognitively normal Parkinson’s disease. PLoS One 2018,13(1),e0190072
  3. Tanei T, Kajita Y, Maesawa S, et al. Long-term Effect and Predictive Factors of Motor Cortex and Spinal Cord Stimulation for Chronic Neuropathic Pain. Neurol Med Chir (Tokyo), 2018, 58(10), 422-34
  4. Sakamoto Y, Okamoto S, Maesawa S, et al. Default Mode Network Changes in Moyamoya Disease Before and After Bypass Surgery: Preliminary Report, World Neurosurg 2018, 112, e652-e61
  5. Maesawa S, Nakatsubo D, Fujii M, et al. Application of Awake Surgery for Epilepsy in Clinical Practice. Neurol Med Chir (Tokyo), 2018, 58(10), 442-52
  6. Kawabata K, Watanabe H, Maesawa S(17/20),et al. Distinct manifestation of cognitive deficits associate with different resting-state network disruptions in non-demented patients with Parkinson’s disease. J Neurol, 2018, 265(3), 688-700
  7. Hara K, Watanabe H, Maesawa S(17/19),et al. Corpus callosal involvement is correlated with cognitive impairment in multiple system atrophy. J Neurol, 2018, 265(9), 2079-87
  8. Bagarinao E, Watanabe H, Maesawa S,et al.An unbiased data-driven age-related structural brain parcellation for the identification of intrinsic brain volume changes over the adult lifespan. Neuroimage, 2018, 169, 134-44
  9. Bagarinao E, Tsuzuki E, Maesawa S(10/12),et al. Effects of Gradient Coil Noise and Gradient Coil Replacement on the Reproducibility of Resting State Networks. Front Hum Neurosci, 2018, 12, 148
  10. Tsuboi T, Watanabe H, Maesawa S(11/14),et al. Early detection of speech and voice disorders in Parkinson’s disease patients treated with subthalamic nucleus deep brain stimulation. J Neural Transm (Vienna), 2017, 124(12), 1547-56
  11. Motomura K, Natsume A,Maesawa S(7/9),et al. Surgical benefits of combined awake craniotomy and intraoperative magnetic resonance imaging for gliomas associated with eloquent areas. J Neurosurg 2017, 127(4), 790-7
  12. Ito Y, Kidokoro H, Maesawa S(12/15),et al. Paroxysmal nonepileptic events in children with epilepsy. Epilepsy Res 2017, 132, 59-63
  13. Bagarinao E, Maesawa S, Ito Y, et al. Detecting sub-second changes in brain activation patterns during interictal epileptic spike using simultaneous EEG-fMRI Clin Neurophysiol 2017 129(2) 377-89
  14. Maesawa S, Fujii M, Futamura M, et al. A case of secondary somatosensory epilepsy with a left deep parietal opercular lesion: successful tumor resection using a transsubcentral gyral approach during awake surgery. J Neurosurg, 2016, 124(3), 791-8
  15. Maesawa S, Bagarinao E, Fujii M,et al. Use of Network Analysis to Establish Neurosurgical Parameters in Gliomas and Epilepsy. Neurol Med Chir (Tokyo), 2016, 56(4), 158-69
  16. Fujii M, Maesawa S, Ishiai S, et al. Neural Basis of Language: An Overview of An Evolving Model. Neurol Med Chir (Tokyo), 2016, 56(7), 379-86
  17. Maesawa S, Bagarinao E, Fujii M,et al. Evaluation of resting state networks in patients with gliomas: connectivity changes in the unaffected side and its relation to cognitive function. PLoS One 2015, 10(2), e0118072
  18. Fujii M, Maesawa S, Motomura K, et al. Intraoperative subcortical mapping of a language-associated deep frontal tract connecting the superior frontal gyrus to Broca’s area in the dominant hemisphere of patients with glioma. J Neurosurg 2015, 122(6), 1390-6

【著書】

  1. 前澤聡.大脳白質解剖入門, 側頭葉内側構造の解剖と手術.藤井正純、森健太郎編、メディカ出版,2019
  2. 前澤聡. 機能的脳神経外科ハンドブック, 侵襲的検査. 三國信啓編, メディカルレビュー社, 2018
  3. 前澤聡. てんかん学用語辞典,頭頂葉てんかん. 日本てんかん学会, 診断と治療社, 2017
  4. 前澤聡, 中坪大輔. 神経疾患治療ストラテジー, 脳深部刺激療法. 辻 省次、祖父江元編, 中山出版, 2017
  5. 前澤聡, 藤井正純, 二村美也子.Annual Review 2016神経, Hodotopyと言語. 鈴木則宏ら編, 中外医学社, 2016
  6. 前澤聡. 脳神経外科レジデントマニュアル. 若林俊彦編, 医学書院, 2016