ご挨拶

この度、令和2年12月16日付けで名古屋大学 大学院医学系研究科 脳神経外科学分野 教授を拝命いたしました。当教室を代表して、ご挨拶申し上げます。

名古屋大学 脳神経外科学教室は齋藤眞初代教授により開設され、以下【当科の歴史】に示すように長い歴史の中で、育ち、発展して参りました。これまでの名古屋大学 脳神経外科教室の歴史と伝統を継承し、「患者を良くする」治療の提供を行い、関連病院との連携を通して地域医療を維持し、医育機関の責任としての人材育成を行うとともに、最先端の脳神経外科医療を探求し、教室の発展に寄与していきたいと考えています。

「診療」に関して。脳神経外科は、脳・脊髄・末梢神経系を含む広範囲におよぶ神経疾患を取り扱います。名古屋大学 脳神経外科教室では多岐にわたる脳神経疾患を克服すべく以下【本科の各診療グループの特徴】に示す8診療グループを構成して、診療に取り組んでいます。最先端の診断・治療機器を駆使して各分野の先進技術を備えた専門医が診療を担当に当たるよう心掛けています。

「研究」においては、常に「患者を良くする」視点に立ち、臨床に根ざし臨床にフィードバックし、そして社会に還元することを目標として、先端的な研究を推進しています。臨床研究を中心に、疾患の原因に迫る基礎研究まで幅広く行っています。

「教育」は教室の柱の一つです。教室の更なる発展には新たな仲間と人材育成が不可欠です。将来の「脳神経外科」医療を担う人材の育成に努めています。脳神経外科医療、脳卒中医療あるいは脳腫瘍や脊髄脊椎疾患の治療など関連分野に興味のある医学生の方や若手医師の皆さんはぜひ、当教室に足を運んでいただければ幸いです。

【当科の歴史】 当教室の歴史は古く、当時のヨーロッパの先進的な脳神経外科手術手技を本邦に導入し、日本脳神経外科学会の第1回〜第3回の会長を務めた齋藤眞教授より始まる。その後、戸田博教授及び橋本義雄教授は地域医療貢献に尽力。景山直樹教授は脳腫瘍病理学・小児脳腫瘍学・神経内分泌学を確立するとともに、日本脳腫瘍病理学会、日本脳血管内治療学会などを創設し、本邦の学問的基盤を築き上げた。特に、低侵襲手術法の先駆的手法である、下垂体腫瘍に対する経蝶形骨洞手術(Hardy approach)の本邦への導入をいち早く確立した。杉田虔一郎教授は脳神経外科の顕微鏡手術(Microsurgery)の確立に中心的役割を果たすとともに、脳動脈瘤に対するSugita clipの開発、Sugita frame、Sugita chair等、脳神経外科手術機器の開発に尽力した。自らの顕微鏡下手術のスケッチをふんだんに挿入した成書“Microneurosurgical atras”は脳神経外科医のバイブルとまで言われ、世界中で愛読された。吉田純教授は生命科学・医用工学の進歩を脳神経外科学に取り入れ、画像誘導手術法の確立、細胞免疫療法の導入の後に、本邦初の脳腫瘍に対する遺伝子治療の臨床応用を実施した。若林俊彦教授は、脳神経外科ロボティクス開発、脳腫瘍のゲノム・エピゲノム・プロテオーム解析に基づく個別化・層別化医療の推進、分子標的イメージングPETプローベや標的核酸医療の新規開発、8K高精度画像技術のICT導入による内視鏡手術臨床応用、「脳とこころの研究センター」設立に伴う脳科学のアジアの拠点形成に尽力してきた。

本科の各診療グループの特徴

脳腫瘍グループ

BrainTHEATERを用いた最先端手術手技と先進医療で、生命・機能予後の向上に取り組んでいます。頭蓋底手術から覚醒下開頭術まで、遍く脳腫瘍手術に対応し、悪性腫瘍には世界最高峰の技術を取り入れて化学療法・放射線治療を行なっています。2000年には本邦初の悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療臨床応用を実施しました。

下垂体・神経内分泌グループ

下垂体腫瘍の他、頭蓋底局在腫瘍に対し神経内視鏡手術、キーホール手術など特殊技術手術を駆使、iNPH(特発生成常圧水頭症)などの認知症の治療も中部地区の拠点として実践しています。

機能的脳外科・画像解析グループ

難治性不随意運動(パーキンソン病、振戦)、てんかん、痛みに対し、最新脳神経画像診断技術を駆使して定位脳手術を実施しています。脳深部刺激療法で本邦初導入ロボット(ニューロメイト)を駆使し新たな分野を開拓しています。

脊髄・脊椎グループ

神経モニタリングや術中ナビゲーション技術を駆使して、低侵襲で最大の効果を得るマイクロサージェリー技術を開発しています。脊髄再生医療の基礎研究を推進しています。

脳神経先端医療開発グループ

悪性脳腫瘍の遺伝子治療を本邦初に臨床応用した実績を有し、各種脳神経疾患先端医療への橋渡し研究に重点を置いた、ニューロサイエンス関係の国内有数の施設を保有しています。

脳血管内外科グループ

脳動脈瘤、脳動脈狭窄病変、動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、血管外傷、脳塞栓、血管性腫瘍等、本邦の血管内治療の草分け的存在で、医師主導型臨床治験も積極的に取り入れ、本邦のディバイスラグの早期解消に務めています。

脳卒中外科グループ

卓越した脳動脈瘤クリップとして全世界で使用されている「スギタクリップ」の生まれた本拠地です。その他、もやもや病に対する血管吻合術、脳虚血疾患に対するバイパス術を積極的に進めています。

小児脳神経外科グループ

小児脳腫瘍:名古屋大学は小児がん拠点に指定されており、すべての脳腫瘍のお子さんを受け入れています。適切な医療連携のもと、迅速かつ安全に診断・治療していきます。先天疾患: 主に、二分頭蓋(脳瘤)、二分脊椎(脊髄髄膜瘤・脊髄脂肪腫)、水頭症など、脳脊髄にかかわるすべての新生児先天疾患を受け入れています。小児脳血管障害:もやもや病やAVMなどすべての小児脳血管障害を脳卒中外科グループと連携して治療にあたります。

名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科学教室
教授 齋藤 竜太