前田紗知先生、大岡史治助教、夏目敦至准教授の論文がActa Neuropathologica Communicationsに掲載され、プレスリリースを行いました。

小児、若年成人に多い難治性の脳腫瘍の予後不良マーカーの発見

~ 全ゲノム解析による染色体異常の解析により、新たな治療法の確立へ ~

 

名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学の 前田 紗知 大学院生、大岡 史治 助教、夏目 敦至 准教授らは、小児や若年成人に多い難治性の脳腫瘍であるH3 K27M変異型びまん性正中部神経膠腫(diffuse midline glioma, H3 K27M-mutant) の全ゲノム解析を行い、特徴的な染色体構造異常を発見しました。

難治性脳腫瘍である神経膠腫は小児期や若年成人期には脳幹部や脊髄等中枢神経の中心部に発生することが多く、手術も困難であり予後は極めて不良です。このタイプの神経膠腫ではH3F3A遺伝子のK27M変異を認めることが多く、H3 K27M変異型びまん性正中部神経膠腫(diffuse midline glioma, H3 K27M-mutant:以下DMG)と名付けられました。近年、DMGの分子研究は進みつつあり、様々な遺伝子異常、エピゲノム異常が見つかっていますが、明確な予後不良の因子は見つかっていません。本研究では、特徴的なH3F3A遺伝子変異パターンを示す4症例のDMGに対して全ゲノム解析を行ったところ、H3F3A遺伝子領域周辺の染色体構造に異常があることを発見しました。これらの腫瘍はそれぞれ異なるタイプの染色体の構造異常を示しましたが、いずれの症例でも変異型H3F3A遺伝子をもつ染色体数と野生型H3F3A遺伝子をもつ染色体数のバランスが崩れており、変異型H3F3A遺伝子をもつ染色体が優位になっていました。これらの腫瘍では変異型H3F3Aタンパク質(H3 K27Mタンパク質)の発現量が増加しており、特定のエピゲノム異常が、より強く誘導されていました。また、この染色体構造の異常を有する腫瘍は増殖が早く、予後不良であることが明らかになりました。これらにより、今回の研究でH3F3A遺伝子領域の染色体異常がDMGの予後不良の因子であることを初めて同定しました。この染色体異常が予後不良に関わるメカニズムを詳細に解明することで、DMGが悪性性質を獲得するメカニズムの解明につながる可能性があります。

本研究は、英科学誌「Acta Neuropathologica Communications」電子版(2020年2月5日付(日本時間10時)に掲載されました。

 

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