慶應義塾大学文学部心理学研究室との共同研究において、本村和也先生が主著者の覚醒下手術関連論文が、Brain Structure and Functionに掲載され、プレスリリースを行いました。

意識下での手術による脳と心に関する脳機能ネットワークの解明

-脳と心の脳神経外科学・認知神経科学の融合型研究-

2019/06/06

名古屋大学

慶應義塾大学

名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・門松健治)脳神経外科学(若林俊彦教授)の本村和也准教授、慶應義塾大学文学部心理学研究室の梅田聡教授、寺澤悠理准教授らの研究グループは、脳腫瘍患者に対する覚醒下手術によって、感情認識に関わる脳機能ネットワークを明らかにしました。

嬉しい、悲しい、腹立たしい、といった自己の感情を認識するために、脳内のネットワークがどのように機能しているか?という問いの答えは、未だに分かっていません。これまでの研究結果から、脳損傷患者症例を対象とした神経心理学的な手法および機能的MRIを用いた脳機能画像解析から、島皮質前部が内受容感覚を意識する場合や主観的に感情を感じる場合に共通して、その活動性が高くなると報告してきました。

本研究では、島皮質に係る脳腫瘍患者に対して、表情認識課題(顔写真から表情を認識する課題(怒り・喜び・悲しみ・嫌悪・感情なし))を用いながら実際に覚醒下手術中に島皮質を直接刺激することで、感情認識に関わる脳機能ネットワーク解析を行いました。手術前、覚醒下手術時および手術後において、表情認識課題を用いて、どれを感じるか答えてもらうことで、表情が表す感情の種類、強さの識別に対して検討しました。覚醒下手術中に、島皮質前部を直接刺激すると「怒り」の認識が明らかに増強されました。また、島皮質を摘出後は、「怒り」の認識がはっきりと低下し、逆に「悲しみ」の認識が増加しました。さらに、Voxel-based lesion symptom mapping(損傷領域と症状の関係性を詳細に検証する手法)によると、怒りの認識は左島皮質と関連することが示されました。これらの知見は、島皮質が身体内部からの情報である内受容感覚に基づく覚醒度の神経基盤として、怒りや悲しみなどの感情認識の変化に関わっていることを示唆しています。

本研究成果は、2019年6月5日付け(日本時間午後10時)国際科学誌「Brain Structure and Function」の電子版に公開されました。

また、本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業「基盤研究B」 (No. 24330210)、「基盤研究C」(No.17K10862)の助成を受けました。

プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。

日本語版

プレリリースBr_Stru_Fun_final_jp

英語版

プレリリースBr_Stru_Fun_final_en