「UCSF留学記」伊藤元一

The University of California, San Francisco (UCSF)留学記

【氏名】伊藤元一(平成11年卒)

2010年7月から2012年4月までの約2年間、カリフォルニア大学サンフランシスコ校 (UCSF)へ研究留学させていただいた経験についてご報告いたします。

1.留学までの経緯

私は大学へ帰局する頃(卒後4-5年)から漠然と海外留学を考え始めました。帰局後は脳腫瘍グループに所属し、しばらく留学する機会に恵まれませんでした。具体的に話がすすんだのは、夏目先生が留学先候補としてUCSFのRussell O. Pieperを紹介して下さった事に始まります。2009年4月には夏目先生に付き添っていただき、実際にPieper研究室を訪問し、インタビューを受けてきました。インタビューは、それまで自分が行ってきた研究内容を発表し、逆にPieper研究室で行っている研究内容の説明を伺うといったものでした。Dr. Pieperからの「留学してもらって構わない。」という返事を得て、若林教授の許可をいただき渡米しました。

2.留学生活

仕事面

2010年7月からUCSF, Department of Neurological Surgeryに所属するBrain Tumor Research Centerでポスドク(Post-Doctoral Fellow: 博士研究員)として研究を始めました。研究室のメンバーは、Dr. Pieperをボスとして、私を含めてポスドク2名、テクニシャン1名の比較的小さな研究室です。私の研究テーマは、悪性グリオーマの細胞株を用いて、抗がん剤投与後のDNA障害の形成過程や細胞シグナル伝達の変化について検証することで、渡米直後にボスから指示されました。しかし、研究テーマを与えられても丁寧な指導が得られる環境ではなく、新しい実験系を立ち上げる際には、その準備に大変な苦労を伴いました。毎週月曜日に行われるラボミーティングでは、結果の解釈や実験の方向性などの意見を聞くことができ、とても有意義でしたが、英語の発表に不慣れな私にとって、渡米当初は週末の大半をその準備に費やしたことは言うまでもありません。研究成果は、TMZ投与後のDNA二重鎖断裂を生じる以前にChk1活性が誘導されていることを見出し、TMZ投与後の早期DNA障害の形成を明らかにしたことです。この結果は、帰国後にPLoS Oneという雑誌で報告致しました。研究生活では、期待した結果が続き興奮するような日々が時にはありましたが、そうではない事も多く、研究の厳しさや難しさ、また研究をすすめていく上でのプロセスについて学ぶことができました。

生活面

平日の夕方にプロ野球観戦、週末にはサンフランシスコ市内観光、2011年11月にはSociety for Neuro-Oncology meetingのポスター発表に乗じて、家族とロサンゼルス市内観光とディズニーランドを楽しみました。翌年3月には週末を利用して友人家族と行ったラスベガス旅行もよい思い出です。アメリカ生活では、様々な人種や考え方があると感じる一方で、同じ人間同士あまり変わらないと感じることも多くありました。私にとって言語の壁は最後まで厚かったですが、文化の違いを肌で感じたことは何事にも代えがたい貴重な経験でした。
最後に若林俊彦教授および夏目敦至准教授をはじめ、関係諸先生方の多大なるご理解とご支援のもとにこの研究留学をなしえたことをこの場をお借りして御礼申し上げます。


研究室のメンバーと。一番左が筆者、隣がDr.Pieper